マーケティング領域におけるデータ分析の現状
前節で、顧客行動の分析がマーケティングに生かしやすい、と述べたので必然的に、情シスはマーケティング部門との連携を進めるのがよいということになる。ここで簡単に、マーケティング部門のデータ分析についての取り組みの現状を整理したい。
近年のマーケティング領域におけるデータ活用の進化は目まぐるしいものがある。「デジタルマーケティング」「パーソナライズドマーケティング」「データベースマーケティング」といったキーワードがまさにその勢いを象徴している。
しかし、あまりの進化の速度にほとんどの企業が追い付けていないのが現状だと思われる。なぜ追い付けていないか。その原因の最も大きな理由が、多くのマーケティング部門が「データを自在に取り扱うことができない」からだと考える(これは、まさに情シスの強みの真逆である)。そのため、データ活用の面で完全に後れを取ってしまっている、という状況に陥っているのではないか。
連携のポイント
マーケティング手法が多様化していく中、マーケティング部門のスタッフのスキルセットが多様化に追い付いていない。ゆえに、データ分析分野のスキルセットを持った情シスが連携することは、企業のマーケティングを推進する上で大きなメリットになるだろう。
連携で重要なポイントは3点ある。
- マーケティングの意思決定者は誰か、を把握する
- マーケティング部門とのコミュニケーションを円滑化する
- マーケティング部門が見たいものが容易に見られる環境を構築する
順に追っていきたい。
マーケティングの意思決定者は誰か、を把握する
「そんなの部門の長に決まっているだろう」と思われるかもしれない(実際そうなっている組織もあるだろう)。しかし、気を付けなければいけないのは社長、役員含めた「経営層」の存在だ。多くの企業の中で、マーケティング部門は広告出稿などで最もお金を使う部門である。当たり前だが、経営層はコストをとても気にする。
必然的に、経営層とマーケティング部門とのコミュニケーションは必然的に多くなる。経営層が意思決定し、マーケティング部門をコントロールしている、という実態はよく耳にする。仮にそのような組織構造だとしたら、マーケティング部門と情シスが議論しても無駄なことが多い。なぜなら経営層の鶴の一声で意思決定がなされてしまうからだ。この場合、経営層も交えて議論しなければいけない。
連携することが目的になってはいけない。連携はあくまで手段である。目的は、データ分析を用いてよりよい意思決定であり、そのためには、必ず意思決定者を把握しておく必要がある。