Microsoft WPC 2015

「真逆の方法」でクラウド競争に勝つ--マイクロソフト

怒賀新也 (編集部)

2015-07-16 07:59

 米Microsoftは米国時間の7月13日から1週間、年次のパートナー向けカンファレンス「Microsoft Worldwide Partner Conference 2015」をフロリダ州オーランドで開催している。

 初日の基調講演で、パートナー向け施策として昨年発表した「Cloud Solution Provider (CSP)プログラム」を強化するとアナウンスした。「Microsoft Cloud」で利益率の高いクラウドサービスをパートナーが自ら構築し、課金を含め、顧客と取引できる。

 Microsoftを意識せずに、パートナーが主体的にAzureなどをベースとしたビジネスを展開できるようになる。

日本マイクロソフトの執行役常務、ゼネラルビジネス担当の高橋明宏氏
日本マイクロソフトの執行役常務、ゼネラルビジネス担当の高橋明宏氏

 CSPにより、Microsoftのクラウド戦略はどう変わっていくのか。日本マイクロソフトの執行役常務、ゼネラルビジネス担当の高橋明宏氏は、CSPをベースにしたパートナーエコシステム中心のクラウド戦略について「競合企業とは真逆の戦略を採る」と話す。

 Amazon Web Servicesをはじめとしたクラウドのライバルが、どちらかと言えばウェブをベースにした直販を志向するのに対して、Microsoftは売り上げ比率の92%が間接販売ということもあり、あくまでもパートナー経由に重心を置く。

 「直販では当然中抜きのモデルになってしまう。Microsoftはこれまで30年間にわたりパートナーと一緒にビジネスをしてきた。パートナーの種類も数もAWSとは段違いだ。われわれの一番強みと考えている」(高橋氏)

 だが、目の前に楽な状況が待っているわけではない。高橋氏は昨年度を「苦しい1年だった」と振り返る。Windows XPのサポート終了と消費増税に伴う駆け込み需要があった一昨年度の反動が大きかった。「特需は続くものではない」と実感する一方で、クラウドへのシフトを加速し、サービスとしてのコンピューティングによる安定的な収入の確保の必要性を痛感したという。

 高橋氏によると、今後2年間で日本マイクロソフトのエンタープライズ部門の収益の半分をクラウドから得るように、米本社から要請されているという。「少なくとも3桁の成長を続けないと不可能」(同氏)。

 ここ数年、Office 365事業は安定しているが「次はAzure、Dynamics CRM Onlineに力を入れていく」とのこと。

機械学習など新たな可能性

 パートナーエコシステムを中心にしながら、新たな技術をベースにしたビジネスも模索する。

 初日の基調講演で、Microsoftは機械学習やホログラム技術を用いた新たなデータビジネスの可能性を強調した。今後のパートナービジネスの重要な基盤になってくる。(下の動画は、ホログラムとデータ分析技術を使った初日の新ビジネスのイメージデモ)

 「気象予測データと連携させて種まきの最適な時期を伝える、交通量が増加するタイミングがいつか、雪かきの最適ルート通知といったことを伝えるデータサービスなどが考えられる」(同氏)

 ここで、新たなビジネスを生み出すのは、それぞれの専門領域で強みを持つパートナーということになる。ユニークなビジネスを始める企業を基盤から支援することで、さらなる収益増を図るのがMicrosoftの狙いと言える。

 「最近社内でPastmerという言葉がよく使われる」とのこと。PartnerとCustomerを合わせた造語だ。Microsoftから見ると、今後ビジネスを展開する上で、取引先がパートナーであるのか、顧客であるのかが分かりにくくなると予想しているという。

 「企業を見る際に、どんな生業(なりわい)を持っているのか、ということに注視するようにしている」(高橋氏)

 7月1日に日本マイクロソフト社長に就任した平野拓也氏は、2016年6月までに、クラウド関連のパートナー企業を現在の2500社から1000社増やし、3500社に増やすと述べた。

 Office 365、Azure、Dynamics CRM Onlineだけでなく、機械学習などの新たな技術を扱うパートナー企業を取り込むことで、クラウドビジネスの拡大を目指す考えだ。

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ホワイトペーパー

新着

ランキング

  1. セキュリティ

    迫るISMS新規格への移行期限--ISO/IEC27001改訂の意味と求められる対応策とは

  2. セキュリティ

    警察把握分だけで年間4000件発生、IPA10大脅威の常連「標的型攻撃」を正しく知る用語集

  3. セキュリティ

    まずは“交渉術”を磨くこと!情報セキュリティ担当者の使命を果たすための必須事項とは

  4. セキュリティ

    いま製造業がランサムウェアに狙われている!その被害の実態と実施すべき対策について知る

  5. セキュリティ

    VPNの欠点を理解し、ハイブリッドインフラを支えるゼロトラストの有効性を確認する

ZDNET Japan クイックポール

所属する組織のデータ活用状況はどの段階にありますか?

NEWSLETTERS

エンタープライズコンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]