米Microsoftは米国時間の7月13日から1週間、年次のパートナー向けカンファレンス「Microsoft Worldwide Partner Conference 2015」をフロリダ州オーランドで開催している。
初日の基調講演で、パートナー向け施策として昨年発表した「Cloud Solution Provider (CSP)プログラム」を強化するとアナウンスした。「Microsoft Cloud」で利益率の高いクラウドサービスをパートナーが自ら構築し、課金を含め、顧客と取引できる。
Microsoftを意識せずに、パートナーが主体的にAzureなどをベースとしたビジネスを展開できるようになる。
日本マイクロソフトの執行役常務、ゼネラルビジネス担当の高橋明宏氏
CSPにより、Microsoftのクラウド戦略はどう変わっていくのか。日本マイクロソフトの執行役常務、ゼネラルビジネス担当の高橋明宏氏は、CSPをベースにしたパートナーエコシステム中心のクラウド戦略について「競合企業とは真逆の戦略を採る」と話す。
Amazon Web Servicesをはじめとしたクラウドのライバルが、どちらかと言えばウェブをベースにした直販を志向するのに対して、Microsoftは売り上げ比率の92%が間接販売ということもあり、あくまでもパートナー経由に重心を置く。
「直販では当然中抜きのモデルになってしまう。Microsoftはこれまで30年間にわたりパートナーと一緒にビジネスをしてきた。パートナーの種類も数もAWSとは段違いだ。われわれの一番強みと考えている」(高橋氏)
だが、目の前に楽な状況が待っているわけではない。高橋氏は昨年度を「苦しい1年だった」と振り返る。Windows XPのサポート終了と消費増税に伴う駆け込み需要があった一昨年度の反動が大きかった。「特需は続くものではない」と実感する一方で、クラウドへのシフトを加速し、サービスとしてのコンピューティングによる安定的な収入の確保の必要性を痛感したという。
高橋氏によると、今後2年間で日本マイクロソフトのエンタープライズ部門の収益の半分をクラウドから得るように、米本社から要請されているという。「少なくとも3桁の成長を続けないと不可能」(同氏)。
ここ数年、Office 365事業は安定しているが「次はAzure、Dynamics CRM Onlineに力を入れていく」とのこと。
機械学習など新たな可能性
パートナーエコシステムを中心にしながら、新たな技術をベースにしたビジネスも模索する。
初日の基調講演で、Microsoftは機械学習やホログラム技術を用いた新たなデータビジネスの可能性を強調した。今後のパートナービジネスの重要な基盤になってくる。(下の動画は、ホログラムとデータ分析技術を使った初日の新ビジネスのイメージデモ)
「気象予測データと連携させて種まきの最適な時期を伝える、交通量が増加するタイミングがいつか、雪かきの最適ルート通知といったことを伝えるデータサービスなどが考えられる」(同氏)
ここで、新たなビジネスを生み出すのは、それぞれの専門領域で強みを持つパートナーということになる。ユニークなビジネスを始める企業を基盤から支援することで、さらなる収益増を図るのがMicrosoftの狙いと言える。
「最近社内でPastmerという言葉がよく使われる」とのこと。PartnerとCustomerを合わせた造語だ。Microsoftから見ると、今後ビジネスを展開する上で、取引先がパートナーであるのか、顧客であるのかが分かりにくくなると予想しているという。
「企業を見る際に、どんな生業(なりわい)を持っているのか、ということに注視するようにしている」(高橋氏)
7月1日に日本マイクロソフト社長に就任した平野拓也氏は、2016年6月までに、クラウド関連のパートナー企業を現在の2500社から1000社増やし、3500社に増やすと述べた。
Office 365、Azure、Dynamics CRM Onlineだけでなく、機械学習などの新たな技術を扱うパートナー企業を取り込むことで、クラウドビジネスの拡大を目指す考えだ。