IT専門の調査会社である米IDCが5月に公開した「Worldwide Smart Phone 2015-2019 Forecast and Analysis(2015年から2019年までの世界における携帯電話市場/予測と分析)」によると、2014年には13億台だったスマートフォンの出荷台数は、2015年には前年比11.9%増の15億台に上るという。
スマートフォンの普及に伴い、同デバイスを狙った攻撃も急増している。特に、利用者が多いAndroidプラットフォームを標的とした攻撃は、オープンプラットフォームであるがゆえに“攻撃可動領域”も大きく、その攻撃手法もさまざまだ。
「現在のスマートフォンには、従来のものとは比較にならないほど多くの情報が格納されている。攻撃者にとってこうした情報は金になる“資産”だ。さらに、ネットワークに常時接続をされているのでPCよりも攻撃しやすい。しかし、利用者はこの脅威に対してあまりにも無頓着だ」と警鐘を鳴らすのは、RSAでSecurity Researcherを務めるRotem Salinas氏とLior Ben-Porat氏だ。両氏はRSAの研究チーム「RSA FirstWatch」でセキュリティ脅威情報の収集や、マルウエア分析に携わっている。
進化するモバイルデバイスへの脅威に対し、ユーザーはどのように対峙すべきなのか。「RSA Conference Asia Pacific & Japan 2015」(7月22日~24日/シンガポールにて開催)で、両氏に話を聞いた。
――PCと比較し、スマートフォンにセキュリティソフトを導入しているユーザーは少ない。この現状をどう見るか。
RSAでSecurity Researcherを務めるLior Ben-Porat氏。Android OSを標的としたモバイルマルウエアのエキスパートだ
Ben-Porat氏 確かにPCと比較し、スマートフォンのセキュリティ対策は遅れている。われわれはセキュリティベンダーとして、スマートフォンにはPCと同じくらい脅威があることを伝えている。
Salinas氏 ただし、エンドユーザーへの啓蒙活動は、1社のセキュリティベンダーだけが実施しても限界がある。スマートフォン(モバイルデバイス)を提供しているハードウェアベンダーをはじめ、通信キャリアらとともに注意喚起していきたいと考えている。
――モバイルマルウエアの主な侵入経路を教えてほしい
Ben-Porat氏 複数の経路があるが、大きく2つに大別される。1つは既存のアプリに悪意のあるコードをインジェクションし、コードを書き換える手法。もう1つは、人気アプリとそっくりな偽アプリをアップロードし、「アプリをアップロードした」といったフィッシングメールをばらまいてダウンロードさせる手法だ。
―― モバイルマルウエアに感染するとどのような脅威となるのか。
Salinas氏 最も多いのは、カメラを遠隔地から操作し、ユーザーの行動を盗み取ったり、電話帳やメールアドレスファイルにアクセスし、それらの情報を抜き取ったりといったことだ。ただしユーザーが許可しない限り、インストールしたアプリが他のアプリに勝手にアクセスし、そこで管理している情報を盗取するといったことはできない。
Ben-Porat氏 一番危険なことは、ダウンロードしたアプリがどのファイルにアクセスするのかを理解しないまま、アクセス許可を与えてしまうことだ。また、古いデバイス/OSによっては、マルウエアにルートを乗っ取られるものもある。
さらに最近では、個人の情報を盗取するだけでなく、国家レベルの大組織が仕掛けているのではないかと推察されるような攻撃もある。例えば、大手サプライチェーンで利用している業務用モバイル端末を一斉に乗っ取り、業務停止に追い込もうとした攻撃もあった。今後、こうした大規模な攻撃は、増加していくと予想される。