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谷川耕一「エンプラITならこれは知っとけ」

最近流行の機械学習、高度な統計処理との違いはどこにあるのか - (page 2)

谷川耕一

2015-09-16 07:00

 ところで、そもそもここ最近の機械学習ブームのきっかけとなったのは、「Deep Learning(深層学習)」だろう。単なる機械学習とDeep Learningの違いはどこにあるのか。

 「Deep Learningはニューラルネットワークの1種です。Googleによる猫の顔の識別で有名になりました。これはある意味、人工知能研究者にとって究極の目標の1つでもあります。非線形の事象から特徴を抽出するもので、逆演算できない、証明できない世界です。一方で統計的な手法は線形を解析するもので、逆演算できて証明が可能です」(中西氏)

 クイズで優勝したWatsonの世界をIBMが人工知能だと言わずにコグニティブだと言うのも、このDeep Learningを使っていないからというのも理由の1つだろう。彼らは知識ベースを独自の方法、ロジックで機械学習し認知するコンピュータを作り上げているのだ。

ソーシャルネットワークのデータから実現できるかもしれない感性情報処理

 統計と機械学習の違いについては、もう1つの側面から捉えることができる。

 「たとえば国勢調査、これはデータをためて全体の傾向が見えれば良しと言うもので、つまりはマスを捉えるための調査です。まさに統計が得意とする分野です。一方で今は世の中にいろいろな人がいるという認識になっています。それを捉えるには、特徴的な人を分けることになる。結果的にはそれがワントゥワンマーケットなどにつながっていきます。分けるところにフローデータが入ってくれば、まさに機械学習になります」(中西氏)

 1年ほど前なら、ビッグデータと言えばそのほとんどが大量データをためるものだった。これがある意味、機械学習の登場によって変化してきているとも中西氏は指摘する。ためずに扱うビッグデータだ。これはストリームデータ処理であったり、エッジコンピュータ、フォグコンピュータなどとも呼ばれたりする世界だろう。ここ最近になり、ためずに扱うビッグデータの新しい世界が確実に始まっているのだ。


国際大学GLOCOM 准教授 中西崇文氏

 ところで中西氏の専門分野の1つが、ビッグデータを扱うような大規模データベースや分析だ。彼がもう1つ力を入れているのがビッグデータを活用する「感性情報処理」とのこと。

 「行動履歴の情報などを使うと、人の意図がつかめます。センサデータなどを活用すると人の意図が捉えられるので、それを何かに活用できないかを研究しています」(中西氏)

 これは、SQLで「select "柔らかいもの" from table」と書くようなイメージのものでもあり、発展させることができれば、たとえばコンピュータに「暗いイメージの曲を作って」と命令すると自動でそれを作曲してくれるような世界だ。「これは知識ベースと言うよりは、意図ベースとでも呼ぶべきものです。さまざまなものがそこから取り出せるようになれば、ちょっと注目が集まるのではと思っています」と中西氏。

 感性は言葉がないと表現できない。その言葉のデータが今はソーシャルネットワークなどに大量に流れている。1つのデータベースだけでは解決できないようなものも、別のデータベースと組み合わせれば解決できるかもしれない。そんな研究を中西氏は進めている。

新しい技術を新しい分野にこそ適用すべし

 さまざまな新しいテクノロジをどう使えば良いのか。中西氏は、機械学習にしても統計処理にしても、どんどん試してみることが必要だと言う。進化のスピードは速いので、それに遅れないように活用してみるのだ。もう1つ、今まで使ってこなかったところに技術を適用してみる必要もあると言う。以前はこの分野ではこういう手法でデータを分析し活用していたとこだわらずに、全く別の領域に手法を当てはめて使ってみるのだ。

 そして現在は、今までは得られなかったようなところからデータが取れ、データが流れてくる。そのデータに対して比較的安価にコンピュータやAIの技術が使える。「これは大きなことです。全く違うものが見えてくるようになると思います」と中西氏。例えば、数年前まではGPS付きのスマートフォンを、多くの人が日常的に持つようになるなんて誰も想像していなかった。それが今は当たり前、ドコモやソフトバンクといった企業はそこから得られるさまざまなデータを持っている。

 どこに誰が住んでいたかを調べるのが国勢調査なら、何時何分に人がどこにいたかを明らかにするのがGPSの情報だ。国勢調査の結果で街作りを考えるよりは、GPSの情報を活用して街作りをした方が効率的で便利な街ができるであろうことは誰もが容易に想像できる。そういう意味ではデータをためて分析する「国勢調査」の統計ではだめなのだ。スマートフォンから生まれるフローデータを、機械学習などの手法で上手く活用するのが、今後の世の中を良くするための技術活用では重要な鍵となるのは間違いなさそうだ。

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