Dreamforce

企業がAIを活用するために大切なこと--セールスフォースリサーチ

谷川耕一 2017年01月25日 07時30分

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 2016年10月に開催されたSalesforce.comの年次カンファレンス「Dreamforce 2016」、ここで大きく取り上げられたのがAI技術の「Einstein」だった。Einsteinは、Salesforceが提供するさまざまなAI機能の総称だ。Einsteinにより、既存のSalesforceのCRMやSFAのアプリケーションに予測や推奨などの機能を提供し、蓄積されるデータを学習してプロセスの自動化が実現できるようになる。

 SalesforceではAI技術のEinsteinを提供するために、AIに関連する多くの企業や技術を買収してきた。その結果、技術だけでなく高度なAI技術を持った優秀な人材もSalesforceに集結している。現在彼らの多くは、AI技術に注力するための開発グループ「Salesforce Research」に所属し、AI技術に関するさまざまな研究、開発に取り組んでいる。

 Salesforce Researchチームをリードしているチーフサイエンティストのリチャード・ソーチャー氏に、SalesforceがAIの技術研究開発にどう取り組んでいるのか、そしてSalesforceの目指しているAI技術の未来について話を聞いた。

研究、開発だけでなくAIの民主化のための活動も

--Salesforce Researchの目的について教えてください。

リチャード・ソーチャー氏
Salesforce Research チーフサイエンティストのリチャード・ソーチャー氏

 ソーシャルネットワークのデータやIoT、モバイル端末から得られるものなどさまざまなデータセットがあります。そういったデータセットのデータを、AIを駆使することで活用することができます。AIの機能をうまく動かすにはこのデータセットがあり、さらにアルゴリズム、ワークフローが必要です。

 この3つの要素について、AIの最先端技術の研究を続けるのがSalesforce Researchの責務です。われわれの研究開発を通じて、SalesforceのCRMやSFAからAIの機能を誰でも使いやすいものにしていきます。

--具体的には今、どのような技術研究をしているのですか?

 情報のインプット、アウトプットのところを対象にしたものが1つあります。例えば音声認識などがそうです。音声で情報を入れ、文章で答えを出すことに取り組んでいます。入力は音声だけでなく文章の場合もあります。機械翻訳などもこの領域です。メールの情報を入れ、そのコンテキストを読み取り、ナレッジベースを使って回答を提供できます。こういった処理をより高速に行うためにDeep Learningの技術も利用しています。

 SalesforceではAIの民主化を掲げているので、単にAI技術の研究開発をするのではなく、こういった技術をコンシューマー向けに提供できるようにする活動もしています。Salesforce Researchでは、Deep Learningやアルゴリズムを拡張し、より複雑なことの実現を目指しています。

--AIを使っても、日本語の文章のコンテキストを理解するのは難しいとも言われています。SalesforceのAIの技術では、日本語の文章を理解できますか?

 例えば自分が写っている写真があるとします。写っている人物が誰で、どこにいるのかなどを訊ねるいくつかの質問が考えられます。AIで写真の中の情報をロジカルに取り込んで把握できれば、その質問に答えられます。その際には、写っているものの固有名詞も把握することになるでしょう。このように写真の中の情報を把握する際には、英語と日本語ではそれほど違いがあるとは思いません。

 すでにわれわれには、文章の感情分析を行う機能があります。他社の同様の機能では、文章がポジティブかネガティブかを判断するために、文章に含まれているポジティブな単語の頻度などを分析しているものが多くあります。対してSalesforceでは、文章そのものを見ています。文章が否定なのか肯定なのかを統合的に判断するのです。

 これは英語だけでなく、他の言語でも同じように行えます。文章を言葉に分解して解析するのではなく、文章全体を見て判断します。なので、言語が変わっても感情を分析できるのです。これについてはSalesforceの研究者が、すでに関連する研究論文を多数発表しています。

 例えばこの分野でちょっと面白いものとして、東京大学からインターンで来ている橋本和真氏とSalesforce Researchのシニアリサーチャーとの共同研究論文があります。この研究では、Q&Aのやりとりなどで、質問の文章の言語パターンからどういう文法、フレーズを用いているかを認識し、ソーシャルネットワークなどから同じようなやりとりの文章を探し出して適切な答えを導き出せます。

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