言い換えれば、EMCとDellは過去最大規模のLBOで統合されるものの、Amazon Web Services(AWS)やMicrosoftといったハイパースケールクラウドを提供する企業の後塵を拝し、IBMが気を吐くハイブリッドクラウド分野でも手駒に欠ける。またHewlett Packard(HP) Enterpriseは、DellとEMCの合併にまつわるFUD戦略(競合製品に対する恐れ、不確かさ、疑わしさをあおるマーケティング戦略)を展開してくるはずだ。こうしたFUDの大半は、EMCとDellが合併後、大きな負債を抱えてイノベーションに十分な資金を回せないのではという疑念になるだろう。
今後、ITベンダーの勢力図が書き換えられるのは間違いないだろう。PC事業およびプリンタ事業を展開するHP Inc.とともにHewlett-Packardからの分社化が予定されているHP Enterpriseは、より小回りがきくようにダウンサイジングを進めることになる。EMCとDellはこれとは反対の方向に歩むわけだ。
JefferiesのアナリストJames Kisner氏は買収のうわさが報じられた段階で、EMCとDellの企業規模から考えて整理統合が進むだろうと述べていた。
われわれは、合併による最大のメリットが規模の拡大だと判断している。DellとEMCはともに、AmazonやGoogle、Microsoftといった豊富な資金を持つ企業との間で激しい競争にさらされるようになってきているため、規模の拡大によって両社は顧客に対して、より大きな戦略的重要性をもたらせるようになる。また合併によって両社は、プライベートクラウドスタックの分野で競争力を高められるようになるはずだ。Dellはネットワーク分野ではHP Enterpriseほど目立った存在ではないが、サーバやソフトウェアクラウドの分野では欠かせない存在となっている(例えば、Dellのサーバはハイパーコンバージドアプライアンスとして活用できる)。われわれの見解では、企業顧客はプライベートクラウドベンダーに対して、統合が容易でスケーラビリティに優れた、そして理想を言えば他のベンダーの製品との相互運用性も備えたプライベートクラウドスタックを提供してもらいたいと考えている。この合併により少なくともEMC製品を目にする機会は増えるだろう。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。