連載第1回では、情シスとデータ分析の親和性に触れつつ、いかにマーケティング部門と連携を図るかについて紹介した。第2回と第3回では、分析組織としてカバーしておきたいツール、マーケティングへの活用方法やプログラミング言語、環境についてマーケティング編とエンジニアリング編に分けて紹介する。
マーケティングのデータ分析を含むビジネスデータ分析におけるフローは以下のようになる。
- 現状とあるべき姿の把握
- 問題発見
- データの分析(可視化ベースの分析、統計手法・機械学習ベースの分析)
- アクションの実行
まず現状とあるべき姿を把握することでそのギャップ、すなわち解決すべき問題がどこにあるのかを発見する。次に問題に関して構造分解、比較などの分析により問題の原因を特定する。最後に特定した原因に関して、コストに見合った最適なアクションを実行する。
このビジネスデータ分析のフローにおいて、データ分析ツールが必要となるのは問題発見、データの分析である。この2ステップにおいて、どのようなツールをどのように活用すればよいのだろうか。
問題発見--Excelを用いて
まずデータ分析で問題を発見するためのツールとして第一に紹介するのはExcelである。表計算ソフトとして日常的に使用している方は「Excel? もう知ってるよ!」と物足りなく思うかもしれない。しかし、Excelで実際にデータ分析を行う方法について知っている方は意外と多くないのではないのだろうか。ここでは身近なExcelを用いて現状とあるべき姿の把握、問題発見を行う手法を説明しよう。
ピボットテーブル
ピボットテーブルはExcelでクロス集計を行う強力なツールである。ピボットテーブルは「データ」バーの「ピボットテーブルで集計」から使用できる。ピボットテーブルビルダーにおいて、「行」に縦に見たいフィールド名、「列」に横に見たいフィールド名、「値」に見たい値を入れることで容易にクロス集計を行える。
ここで実例を交えてどのようにマーケティングに生かすのか見ていこう。今、あなたはある居酒屋のマーケティング担当である。あなたが働く居酒屋は最近新メニューを多く出しているものの、売り上げが下がってきているという問題を抱えている。データ分析のツールと手法を使って、この問題を解決するための施策を考えよう。
まず、ピボットテーブルを使って、月ごとの売り上げを分解し、問題の所在がどこにあるのかを把握しよう。今、居酒屋の購買ログが図のような形で存在する(図1)。ピボットテーブルでクロス集計を行うと購買ログから月次の売り上げ、顧客数、顧客単価が集計できる(図2)。
(図1)購買ログ
(図2)ピボットテーブル結果
折れ線グラフで表示したピボットテーブルから、顧客単価が5月から売り上げが低下していることが判断できる(図3)。この結果から、居酒屋の売り上げの減少の問題の所在に単価の減少が大きく関わっていることがわかる。
(図3)ピボットテーブルの可視化