NECは11月2日、ビッグデータ分析を高度化する人工知能技術の1つとして、予測に基づいた判断や計画をソフトウェアが最適に行う「予測型意思決定最適化技術」を開発したと発表した。
同社の「異種混合学習技術」などを用いた予測結果に基づき、これまで人間が実施していた戦略や計画の立案といったより高度な判断をソフトウェアで実現するというもの。さまざまなソリューションへの適用を目指し、同技術を2015年度中に実用化する予定。
近年ではIoT(Internet of Things)などの普及によって、実社会で収集されるビッグデータを活用した分析、予測のニーズが急速に高まっている。
そこでNECでは2012年にビッグデータに混在する多数の規則性を発見する「異種混合学習技術」を開発し、資源の効率化のためのエネルギー、水、食料の需給予測、物流管理を効率化するための在庫需要予測、小売店舗管理の高度化のための商品需要予測など、高精度かつ大規模な予測を自動化できるようにした。
一方、この将来の予測を有効に活用するためには、予測結果に基づいた最適な戦略や計画を立案、実施することが重要となるが、人手による判断には規模や正確性に限界があった。
また、従来の技術では、多数の予測により誤差が累積し判断が不正確となることで、予期せぬ大きな損失が発生する問題があった。さらに、多数の予測式の関係性を考慮した膨大な組み合わせから最適な判断を導き出す計算が膨大になるため、実現が困難であった。
今回開発した予測型意思決定最適化技術は、これまで人間が行っていた「予測に基づいた大規模で高度な判断」をソフトウェアによって超高速かつ高精度に実現する。
主な特徴は以下の通り。
予測誤差に対してリスクが低く効果の高い計画を生成
予測の「典型的な外れ方」(予測誤差)のパターンを独自のアルゴリズムで分析。その結果を数理最適化技術(最適化問題を解くための技術)と融合することで、「外れ方」を勘案した上で最適化する。これにより、予測が外れても損失が発生するリスクが低く、安定して高い効果がでる計画を算出できる。
例えば水の運用管理では、水需要の予測値に対して運用者の経験に基づいた浄水、貯水、配水計画が行われているが、過剰造水による水廃棄が多い、非効率なポンプ運転によって電力コストが高い、需要の過小評価による計画変更が頻繁に発生するといった課題があった。
そこに本技術を適用することで、最大で電力コストを20%削減し、かつ需要の過小評価による計画変更回数を10分の1に削減することが可能との試算が得られている。
大量の予測式の関係を考慮した最適な計画を超高速に生成
同技術は、独自の組合せ最適化アルゴリズムによって、予測式の関係を考慮した大規模な組み合わせを効率的に探索し、超高速に最適な戦略・計画を導出することができる。
例えば、小売店舗の商品価格戦略(ある商品と競合商品の価格と売上の関係など)では、50種類の商品に対して、それぞれの値引き額の候補を10種類設定した場合、可能な価格戦略は10の50乗という膨大な組合せ数となり、通常の最適化技術(混合整数計画法など)では、最適な価格設定を算出するために膨大な時間がかかるとともに、計画の精度も低いという課題があった。
適用することで、商品価格戦略の例では従来の混合整数計画法では数時間から数日かかるところを、1秒未満で店舗の売上を約11%(試算値)増加できる価格戦略を算出できた。さらに、従来法と比較して最適化の精度(店舗の売上増加の試算値)が約20%高い(約9%→約11%)という結果が得られた。