需要予測分析でタクシー待ちをゼロに--UberのCEOが語る“夢物語”と“現実味”

鈴木恭子

2015-11-03 06:30

 9月15日から4日間の日程で開催された米Salesforce.comの年次プライベートコンファレンス「Dreamforce 2015」。会期中はエンターテインメント界から政界まであらゆるジャンルの著名人が講演やセッションに登壇した。

 その中でも参加者の関心を集めたのが、Uberの共同創業者で最高経営責任者(CEO)のTravis Kalanick氏とSalesforce.com CEOのMarc Benioff氏のトークセッションだ。Benioff氏の基調講演前だったことも相まって、会場には多くの参加者が詰めかけた。

Uber CEO Travis Kalanick氏(右)とSalesforce.com CEO Marc Benioff氏
Uber CEO Travis Kalanick氏(右)とSalesforce.com CEO Marc Benioff氏

 Uberは2009年3月に創業したオンデマンドの配車サービス。Dreamforce 2015の会場となったサンフランシスコでは市民の足として確実に定着している。利用者はUberの専用アプリから現在地と移動したい場所を入力するだけで、近くにいるUberと契約した車が配車される仕組みだ。

 「タクシーを呼ぶよりも早く、タクシーよりも安い」のが売り文句で、急速に業績を伸ばしている。The Wall Street Journalによると、2014年6月時点における同社株式の時価総額は182億ドル(約2兆1800億円)。個人ドライバーのほか、一部のタクシーやハイヤー会社もUberと契約しており、現在は70を越える都市でサービスを展開している。

需要予測分析で待ち時間をゼロに

 Kalanick氏は、Uberを「リアルタイムで需要と供給をマッチングするプラットフォーム」であると説明。株式売買の原理と同様に、買い手(需要)と売り手(供給)のバランスで料金が決まり、これにより既存のタクシー業界が抱える課題解決と利用者の利便性向上が実現すると主張する。

 「例えば、米国のタクシードライバーは、勤務時間の半分しか稼働していないという調査結果がある。タクシー1台の維持費は1日で140ドルが必要だ。さらに、タクシードライバーライセンスに関する費用やその他の固定費などは、利用者の運賃に上乗せされる。そのくせ、ユーザーが必要なときに利用できないなどの“欠陥”もある。Uberはこうしたギャップを埋める存在だ。サンフランシスコ市内であれば、タクシーよりもUberの方が平均40%安い」(Kalanick氏)

 現在Uberが注力しているのは、需要予測分析だという。Uberの利用は専用アプリを介するため、Uberには「いつ、どこで、どのくらいの需要があり、実際にどのくらいの利用があったのか」といったデータに蓄積される。さらに渋滞情報や気象情報、地域のイベントデータといった第三者データを取り入れて相関分析をすることで高精度の需要予測が立てられる。

 Kalanick氏は、「こうしたデータを分析し、15分後に需要が発生しそうな地域をリアルタイムでドライバーにヒートマップ表示ができれば、ドライバーの稼働効率も利用者の利便性も向上させることが可能だ」と力説する。

「すべての自動車がUberになれば、現在の交通課題はすべて解決する」と将来の夢を語るKalanick氏
「すべての自動車がUberになれば、現在の交通課題はすべて解決する」と将来の夢を語るKalanick氏

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 もう1つKalanick氏がUberの優位性として挙げるのは、交通渋滞の解消である。Uberは2014年8月から米国と欧州で「UberPOOL」サービスを開始した。これは、同じ方面へ行きたい利用者が複数いる場合に、利用者どうしで1台の自動車に相乗りできるサービスだ。「1人あたりの乗車料金も安くなるだけでなく、交通渋滞の緩和にも貢献する」と同氏は強調する。

 Kalanick氏は、「Uberを利用する人が増えれば、(相乗りなどが進み)交通渋滞は解消される。(普段あまり自動車を利用していない)ユーザーは自動車を所有することにこだわらなくなるだろう。自動車の絶対数が減れば駐車場の空きは増え、交通事故件数は減り、大気汚染も改善される」(Kalanick氏)

 「水道のように当たり前のインフラとしてUberが市民生活に浸透していくこと。将来的にはすべての自動車がUberになるのが夢」と語るKalanick氏。Benioff氏も「Uberはよく利用しているし、UberPOOLでは乗り合わせた人同士でコミュニケーションすることも楽しい」と同社のサービスを賞賛する。

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