NECは自社で提供するサービス「NEC Cloud IaaS」を強化する。11月10日に発表した。
Cloud IaaS上のデータをバックアップやアーカイブに適したオブジェクトストレージに保存する際、ファイルを乱数化した上で分割して複数のオブジェクトストレージに格納する「オブジェクトストレージ セキュアゲートウェイ」を提供する。月額8万870円から(オブジェクトストレージ自体の利用価格は含まない)。
1拠点に外部からの不正アクセスが発生した場合でも、断片ファイルから復元することは不可能になる。障害や災害などから1拠点のオブジェクトストレージがアクセス不能になっても、他の拠点のデータから元のデータを復元できるという。
これにより、複数のクラウドサービスを組み合わせ利用するハイブリッドクラウドの特性を生かした重要データの安全な保管と事業継続性の向上に貢献すると説明。同サービスは「Amazon Simple Storage Service(S3)」「Microsoft Azure BLOB」など他社のオブジェクトストレージサービスでも利用できる。
マイナンバーなど重要情報を格納しているサーバの特権IDの不正利用を防止するID&アクセス管理サービスでシステムの作業担当者がファイルを対象サーバから外部に持ち出す際に自動で個人情報の有無を検知し、管理者の確認用画面に表示する機能を追加した。管理者の不正チェック作業の効率化と作業者による内部不正抑止力の向上に貢献するとしている。
Cloud IaaS上のシステムと他社のクラウドサービス上のシステムを閉域網で接続、システム間でセキュアにデータを連携できるという「NEC パブリッククラウド接続サービス」を12月25日から提供する予定。当初はAmazon Web Services、Microsoft Azureに対応、今後拡充予定としている。
ネットワーク接続に関してNECからの一括手配が可能で、これまでユーザー企業が個別に通信事業者やデータセンター事業者に対して調達、構築するために必要であった手間を削減し、構築期間を従来の約4カ月から約3週間に短縮する。価格は10Mbpsベストエフォートで月額3万3500円から。
Cloud IaaSやハウジングサービス、オンプレミス環境、他社のクラウドサービスまで含めたユーザー企業が利用する、システム全体の運用作業のうちサービスデスクや電話通報、セルフサービスポータル操作代行、リモートオペレーションなどの作業をNECが代行する「NEC Remote Infrastructure Managementサービス」も提供する。
ユーザー企業は対象となるサーバごとにライト、ミディアム、スイートの3つのプランから適したプランを選択し、作業項目数に応じた件数追加オプションを組み合わせることで最適なメニューを構成できると説明している。ライトプランでノード1台、問い合わせや障害申告受付が月1件、ポータル操作代行が月1件の場合で月額3500円から利用できる。
同サービスではCloud IaaSの統合運用管理機能をCloud IaaSのサーバサービス利用とは独立しても提供する。運用作業を効率化できるとともに日々の運用作業をNECに委託することでユーザー企業は運用負荷を軽減し、本来の重要業務にシフトできるとしている。
Cloud IaaSの仮想サーバ(ハイアベイラビリティ:HA)のデータディスクに関し、最大スループットを従来の1000IOPS(1秒あたりの入出力処理回数)から2500IOPSに拡張する。SSDタイプでは高速な5000IOPSにも対応する。
これにより月末や月初など特定の限られた時間内でのバッチ処理、データ移行などのための一時的な高性能処理にも対応できることになる。あわせて、コスト重視のニーズにも対応した400IOPSのタイプも追加する。
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ファイルストレージ(NAS)機能については、複数NAS利用への対応や容量に応じて価格を下げる。最大容量が従来比1.8倍のNAS機能を1テナントで最大5契約まで提供する。容量の増設単位は従来の50Gバイトから10Gバイトに細分化する。ユーザー企業のきめ細かなシステム拡張とコストの最適化を実現できるとしている。
PCのデスクトップ環境をCloud IaaS上のクラウドサービスとして提供する仮想デスクトップサービス「NEC Cloud DaaS」を11月30日から提供する。PCに加え、スマートフォンやタブレットからの利用もできるため、外出中や自宅などからオフィス在籍時と同様の環境を利用できるという。
初期設定費用が不要で、最小20ID(月額7万6000円から、IDあたり月額3800円から)、最短1カ月で利用できる。ウイルス対策、アプリケーション配布(パッチ配布)、VPN接続、デバイス制御などさまざまなセキュリティ対策をオプションで選択できる。
管理者向けポータルから効率的に仮想デスクトップ環境の切り出し、稼動状況を確認できるほか、端末の初期設定、ソフトウェア導入、故障時対応などのPC運用負荷を軽減することで初期投資を抑え、セキュアかつ容易に多様なワークスタイル改革を実現できると説明している。
NECでは、サービス利用型クラウド基盤のCloud IaaSのほか、オンプレミス設置(所有型)クラウド基盤の「NEC Cloud System」があり、今後はさらに双方を連携させるハイブリッドクラウドとしての強化も進めていく方針を明らかにしている。

NECのクラウド基盤全体像(NEC提供)