スマートシティの公益事業
スマートシティの技術を使えば、経費も節減できる。
Ciscoによれば、バルセロナ市では、スマート水道メーター技術を利用することで年間5800万ドルの経費を節減できたという。
韓国仁川広域市の松島新都市は、350億ドルをかけて造成された1500エーカーの埋め立て造成地で、Ciscoを技術パートナーとしてGale Internationalによって建設された。この都市では、スマートシティの機能によって同規模の都市と比べエネルギーと水道の使用量が30％抑えられ、建物内で使用される電気と水道を規制することで、運用コストを削減している。
「この都市には電柱はなく、すべて地中に配線されている。ゴミ収集車もなく、すべてのゴミは、地下を通じて圧搾空気で送られる。各家庭では、テレプレゼンス技術で親が学校の先生と対話することができる」とMenon氏は述べている。
シカゴ市では、予測的アナリティクスを用いて、次に溢れる可能性が高いゴミ収集所を予想し、ネズミの罠を仕掛けている。シカゴ市の最高データ責任者（CDO）であるTom Schenk氏によれば、同市の齧歯類の生息数コントロール効率は20％上昇したという。
予測的アナリティクスは、同市内にある1万5000件の飲食店のうち、どの店舗で違反が起こる可能性が高いかを予想して、検査官を配置するのにも活用されている。同市でこのプログラムを8週間試行したところ、予測的アナリティクスを使用しなかった場合に比べ、規則に違反した飲食店を平均で2週間早く発見できたという。
シカゴ市ではまた、50個のセンサを設置し、橋が凍結した際の関係部門への警告や、ミシガン湖の水質調査に使用している。シカゴ市のイノベーションおよび技術部（DoIT）でコミッショナー兼最高情報責任者（CIO）を務めるBrenna Berman氏によれば、他にも騒音公害や渋滞などに対する取り組みなどが進められている。
提供：City of Chicago
スマートシティの治安と安全
シカゴのスマートシティの取り組みでは、治安も重要な要素だ。同市のパートナー企業は警察と連携して、移動指揮車を通じて現場にテクノロジを導入し、屋外のイベントに多数の人が参加する場合への対処や、あるエリアの人が増えすぎ、暴動が起きる兆候がある場合にそれを阻止するのに貢献している。移動指揮車には、市のLED街灯に組み込まれたHDカメラからのライブ映像で、現場の状況を複数の角度から表示するモニタが多数設置されている。これは、市の危機対応チームが事件対応に使用するための、多くの運用データ部門の情報を1つにまとめる「WindyGrid」ハブの一部だ。
シカゴ警察のコマンドユニット内部
提供：Teena Hammond/TechRepublic
サンアントニオ市では、スマートシティ技術によって裁判所のシステムも簡素化されている。同市の管轄地域は460平方マイル（約1190平方km）に及んでおり、裁判所からかなり遠い地域に住んでいる住人もいて、裁判所への出頭にかかる移動コストが大きすぎるという問題がある。Miller氏によれば、同市の各所にはスマートシティ技術を利用した裁判所情報端末キオスクが配置されており、住民は直接裁判所に行かなくても、モニタを通じて裁判所の手続きを行うことができるという。
同市では令状の取得もオンラインで行えるため、「治安の問題を処理するのにかかる時間が劇的に短縮」することができる。ただしこれは、法律のどちら側にいるかによって、いいことにも悪いことにもなり得る。
