連載第10回は、前回より複雑なIoT/IoEのモデルについて論じたい。デジタルテクノロジで大きく変化する都市の姿、一般的には「スマートシティ」などと呼ばれているが、Internet of Things(IoT)やInternet of Everything(IoE)によるバリューシフトで都市はどんな様相を呈するであろうか。
ドクとマーティがやってきた2015年
「バック・トゥ・ザ・フューチャー」......映画ファンならずとも誰もが一度は耳にしたことがあるタイトルだろう。この映画の2作目で主人公は30年後の未来にタイムスリップするのであるが、それが本年--2015年である。残念ながらまだ車は宙に浮いていないし、自動で乾く服も普及していないが、われわれは毎日この著名な映画にすら登場しなかった、とある素晴らしいテクノロジの恩恵を受けている。それはもちろん、インターネットとスマートデバイスだ。昨今ではスマートデバイスがどんどん小型化し、ネットワークに接続される「モノ」の数が着々と増え続けている。
シスコシステムズが毎年発表する調査資料「VNI(Visual Networking Index)」によると、2014年グローバル全体でモバイル接続されたM2Mモジュールが約5億個あり、5年後の2019年にはその6倍以上(32億個)になるという。また、スマートフォンが生み出すトラフィックはこの5年で10倍になり、毎月18.2エクサバイトものデータを発生させる見込みだ。もはや単位が大きすぎて想像しにくい規模に達しているが、どれだけデータを持っていてもそれを活用できなければ当然バリューシフトは発生しない。
われわれは約30年前に空想したテクノロジの世界とは異なる、通信と情報の社会を手に入れた。ではこの情報化社会においての都市は、一体どのようにバリューシフトしていくのだろうか。
IoE的に都市を解釈する
シスコシステムズはIoT(Internet of Things)の上位概念であるIoE(Internet of Everything)という概念を掲げている(図1)が、その構成要素は(1)ヒト、(2)モノ、(3)データ、(4)プロセスの4つである。ヒトやモノが都市にあふれているように、データやプロセスも都市にあふれている。
図1:IoE(Internet of Everything)の4要素
例えば、警視庁のこのページには地域毎にあらゆる犯罪の発生頻度がデータとして公開されているし、各自治体によるゴミ出しのルールに始まる資源リサイクルはプロセスそのものである。
デジタルテクノロジによる都市のバリューシフトを考える場合、このつかみ所のないデータの「るつぼ」から価値創造の種を見つける必要があり、この点で他の業界のバリューシフトに比べて複雑なモデルになりがちだ。