(3)UIデザインは明確に説明されるべきである
前の二つの項目と関連するが、UIデザインは「設計」であるので、基本的に「なぜ、そうデザインされたか」がなるべく明確に説明されねばならない。明確な理由をもってデザインすることで、UIの評価や改善、「不具合」などへの対策、うまくいっているUIの他のシステムへの応用などが、可能かつ容易になる。システム間、製品間での統一性にもつながる。
明確な理由を持ってUIの各部分をデザインし、そしてそれをきちんと説明するには、UIにまつわるさまざまな知識や技能が必要である。
(4)システム全体でUXを考慮する必要がある
ユーザが使うシステムのUIは、最終的にユーザがそれを使う環境で評価されねばならない。シンプルなシステムでも、実際の場面で本当に設計意図通りにUIが機能するかどうかをきちんと見極めねばならない。画面遷移などを伴う複雑なアプリケーションやシステムになれば、画面ごとのUIの組み合わせで不具合を起こさないかどうかを全体的な視点から考えねばならない。
この観点では、ユーザが受ける感覚やそれに対する反応を考慮することが必要であり、それはすなわちUXを考慮する、ということである。冒頭で述べた「最低ライン」より上を行くためには、欠かせない要素である。
「UXを考慮してデザインする」「UIをきちんとデザインする」とは、突き詰めると単純に「ユーザのことを考えて設計する」という、ある意味当たり前のことである。しかし、たとえそうしているつもりでも、きちんと的確に実行するのは簡単ではない。
例えば、製品やサービスの品質を向上させねばならないのは当たり前のことで組織の全員がそれを気にかけ、取り組まねばならないことだが、品質の向上は必ずしも簡単なことではない。それを推進する品質管理や品質チェックの担当者や部門・部署が存在する場合が多い。それと同様に、UIやUXの向上を推進する担当者や部門・部署も、あってしかるべきなのである。
明確な理解と目的意識を
ここまでで、果たして読者はUIやUXを扱う部署やグループ、担当者の必要性を納得/理解が向上しただろうか?充分に納得し、明確なモチベーション、目的意識を持って作らないとこういった部署はなかなかうまく機能しないだろう。既にそういった部署がある場合も、意義や目的の再確認を行うとよいだろう。
さて、UI/UXを扱う部署(仮に「UI/UX設計部」としよう)ができたとして、その部署はどういう活動を行っていけばよいだろうか。次回はそれを考えていきたい。
- 綾塚 祐二
- 東京大学大学院理学系研究科情報科学専攻修了。 ソニーコンピュータサイエンス研究所、トヨタIT開発センター、ISID オープンイノベーションラボを経て、現在、株式会社クレスコ、技術研究所副所長。 HCI が専門で、GUI、実世界指向インタフェース、拡張現実感、写真を用いたコミュニケーションなどの研究を行ってきている。