海外コメンタリー

政府はテクノロジをどう生かすべき?--オープンガバメント推進の立役者、米政府の元副CTOに聞く - (page 2)

Hope Reese (TechRepublic) 翻訳校正: 石橋啓一郎

2015-12-17 06:15

--オープンガバメントに向けた動きが出てきたのは、新しいテクノロジが出てきた結果なのでしょうか?それとも、文化的な考え方が変化した結果でしょうか。

 どちらもイエスです。まず、新たな種類のコミュニケーションツールが登場したことで、1対1および多対多での対話が可能になりました。情報の交換や共有のためにこれまでにできていた以上のことが可能になりました。今では、より大規模なコミュニケーションやコラボレーションを可能にする新たなツールが利用できます。しかし、テクノロジよりも文化的な変化の方が重要です。実際、ウェブがもたらしたツールによって、参加に対する期待が大きくなっています。

 スーパーボウルでは、企業は広告業界ではなく顧客に広告のデザインをしてもらっています。Local Motorsは、販売する自動車のデザインを顧客に任せています。テクノロジは人を巻き込むさらなるチャンスを生み出し、一方で人の参加や関与に対する需要も高めました。今日の若者は、参加型の体験への期待を高く持っています。若者が政府に対して参加型の体験を求めるようになることは確実だと思います。

--テクノロジ業界はどのようにしてクラウドソーシングでアイデアを集めることに成功してきたのでしょうか。

 テクノロジ業界には、コミュニケーションツールをクラウド―ソーシングやオープンイノベーションに参画するためのコラボレーションツールとして利用し、インターネットを通じて人々に参加を呼びかけている例が数多く見られます。例えば一部の製薬会社は、「InnoCentive」と呼ばれるプラットフォームを作り、彼らが「Solver」と呼ぶ製薬業界の外部の人材からなるコミュニティと関わっています。InnoCentiveの参加メンバーは、研究開発のための問題解決でアイデアを競い、賞金獲得を目指します。この例に倣って、連邦政府はChallenge.govというサイトを立ち上げ、賞金を用意して課題を解いてもらうという試みをしています。この5年間で450件の課題が掲載され、公的な問題の解決に一般の人に関与してもらっています。

 NetflixやInnoCentiveでは民間部門の問題が提示されるのに対し、Challenge.govでは、開発途上国の農業を支援するために、塩水から塩分を取り除く方法を考えてもらうといった課題の解決を一般の人に求めています。現在の課題は、富裕層の子供と貧困層の子供が、生後5年間で耳にする言葉の数のギャップを埋めるためのテクノロジを考えてほしいというものです。これは、子供の教育到達度やその他の人生の目標の到達度に大きな影響を与えます。

--政府がIT業界から学ぶべきことがあるとすれば何でしょうか。

 コミュニティは知能資本を持っていますが、よりターゲットを絞って信頼性のある形でその専門性を活用するための方法が必要です。耳にする単語数のギャップを減らす問題をChallenge.govに掲載することはできますが、必ずしもその情報が、その問題を解決するのに適した人材に伝わるわけではありません。従って重要なのは、問題解決に参加する機会についての情報を、いかにして伝えるかということです。

 政府がテクノロジ業界から学ぶべきなのは、テクノロジを使って、さまざまなタイプの聴衆に的確に訴えかける手段でしょう。民間部門は、いわゆるオーディエンスセグメンテーションに長けており、データを豊富に利用したツールで、どの顧客がいつ歯磨き粉を買う可能性が高いか、といったことを判断しています。また、民間部門では、雇用に関する判断をする際に、オンラインツールを使ってある人物のスキルを調べ、誰を雇うべきかを決める際に役立てることができます。

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