サイドスキャンソナーとマルチビームソナーの使用によって、プロジェクトは高解像度の3次元画像も取得できるようになった。
マルチビームソナーは船底に装備したり、ROVに搭載できる。このソナーを使用すれば、発生させた音波が何らかの表面に反射して返ってくるまでの時間と方向を計測し、海底の3次元画像を構築できる。
MMTが提供したマルチビームソナーにより、極めて正確なジオリファレンスが得られるため、考古学者は沈没船やさまざまな残骸の正確な位置を把握できるようになる。つまり、マルチビームソナーと写真測量を組み合わせて活用するわけだ。そして、2D画像上で位置を特定した物体について、さらに詳しい調査が必要であると判断された場合、マルチビームソナーでその位置を特定し、正確な場所にダイバーを派遣することになる。
このプロジェクトでは、MMTが提供したBlueViewの水中3Dスキャナーも使用している。このスキャナーを海底に設置すると、15分程度で6000万にのぼる点群データを測定できる。そのデータとダイバーが撮影した数百万枚の写真を組み合わせれば、誤差2mmという正確なマップを作成できる。これはマルチビームソナーよりも高い解像度だ。とは言うものの将来的には、BlueViewの点群データとマルチビームソナーのデータを組み合わせて、それぞれの長所を生かす予定だ。
沈没現場における写真測量とBlueViewの水中3Dスキャナー、マルチビームソナー画像によって、厳寒のバルト海の海中数十mまでダイバーを潜らせなくてもマルス号の詳細を調査できるようになったのだ。
「たくさんの人々が『軍艦ヴァーサ号のような新たな沈没船が見つかったんですね。保存をはじめとするさまざまな作業に対してどのように資金協力すればいいのでしょうか?』と尋ねてくる」と述べる同氏は、「それに対してはノーと答えている。そうではなく、われわれは沈没現場からできる限り多くの情報を読み取り、遺物はそのままの状態で海底に眠らせておこうとしている。こういったことは、われわれが未来の海洋考古学と呼ぶものによって可能になる。そしてこれらの技術は、テクノロジ開発全体における重要な部分となっている」と続けた。
マルス号に関する今後の考古学調査のほとんどは、洋上のダイバーではなく、陸上のコンピュータを使って実施される予定だ。3Dモデルの解像度の高さ(そして沈没現場に存在する堆積物の少なさ)のため、考古学者は沈没船の細かい部分まで調査できる。写真のモザイクを使って調査してきた人たちは既に、コンピュータ上でそうした調査を行っており、ダイバーが見落としたかもしれない遺物やその他の物体を探している。
こうした陸上での考古学によって既に、うわさされていた大量の銀貨を含む多くの宝物のほとんどの位置をピンポイントで確定できている。Rönnby氏は「3D写真をズームすることで、海底に散らばっている硬貨を確認できた。どうやら銀貨の詰まった宝箱が爆発で吹き飛んだようだ」と述べた。