切り替えはいつ実施されるのか?
今まさに実施されているところだ。しかし、移行のペースは緩やかなものとなっている。ただそれは、IPv6対応機器の準備が進んでいないためではない。
下図は、IPv6を用いてGoogleに接続したユーザーの数の推移を同社がグラフにまとめたものだ(調査期間は2009年~2015年)。7%は多いとは言えない。
提供:Google
IPv6への移行が遅々として進んでいないのには、いくつかの理由がある。真っ先に挙げられるのは、現在完璧に動作している機器をIPv6対応の機器に置き換える必要などないというものだ。ほとんどの企業は、絶対に必要な状況が発生するまで、この手の支出を認めないだろう。また金銭的な話を抜きにしても、企業の経営者らはこのような改善を実施しても、顧客が気付くようなサービス向上につながらないということを認識している。筆者が話をした企業の役員たちの言葉を総合すると、「アーリーアダプターになったとしても現実的な利益など何もない」というわけだ。
IPv6(RFC 2460)は1998年に公開された。そして、ほとんどすべてのネットワーク機器はIPv4やIPv6、あるいはその双方に同時に対応できる機能を備えている。しかし正直なところ、IPv6は複雑なプロトコルだ。このため単にIPv4を無効化し、IPv6を有効にするだけで話は終わらない。とは言うものの、こういった作業をできる限り楽にするためにエンジニアや管理者はさまざまな努力を続けている。
本格的な移行がいつ始まるのは、まだ分からない。ネットワーク関係の有識者は、IPv6への移行が本格化するには、IPv4に重大な欠陥が見つかり、それが犯罪に利用されるといった大きな出来事が必要だと述べている。
インターネット協会の最高インターネット技術責任者(CITO)を務めたこともあるLeslie Daigle氏は、IPv6の普及がなかなか進まないもう1つの理由を語ってくれた。同氏によると、IPv6は「IPv4に対する本当の意味での後方互換性がないという致命的な問題を抱えている」という。
ITの歴史を通じて見た場合、ほとんどの次世代イノベーションは、それ以前の技術との共存が可能であった。しかしIPv4とIPv6はそのようになっていない。そしてIPv6の持つ複雑さにより企業は、IPv4を捨て去ってIPv6をすぐに採用しようとしないのだ。そのことは、IPv4とIPv6を同一ネットワーク上で共存させるためのツールを開発する小規模企業が星の数ほど生み出された点を見れば明らかだろう。