S/4 HANAが目指す破壊なきイノベーションとは

末岡洋子 2016年02月02日 07時00分

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 デジタルエコノミーが現実のものとなっている。40年前に統合基幹業務システム(ERP)の概念を企業にもたらしたSAPの提案は何か――。SAP HANAを土台とした「SAP S/4 HANA」で23年ぶりのERP刷新を図る同社で、インダストリークラウド担当プレジデントとして同組織を統括するPat Bakey氏にクラウドを中心に話を聞いた。「SAPはクラウドカンパニーだ」とBakey氏は語るがその真意は――。

――インダストリークラウドとはどのような事業部になるのか。

SAP インダストリークラウド担当プレジデント Pat Bakey氏
SAP インダストリークラウド担当
プレジデント Pat Bakey氏

 SAPは製造、自動車など業界向けのソリューション提供を行なっており、ここ10~15年戦略的に重要になっている。SAPでは、顧客が抱えている課題を解決するために業界の知識を獲得し、それに即した会話をする必要がある。世界的にあらゆるビジネスがデジタルに向かっており、業界の境が曖昧になり、複雑性のために機会が分かりにくくなっている。インダストリークラウドは機会を明確にし、再構築する。

 ”クラウド”という言葉が入っている。クラウドは現実のものとなった。SAPはクラウドカンパニーだ。われわれにとってクラウドは、多くの人が連想するような環境や技術ではなく、俊敏性を持って高速に動くことを意味する。どのように顧客と協業するのか、ポートフォリオをイノベーションするのか。業界でクラウドの重要性が高まっており、われわれもクラウドを中心に製品を構築する。この意味でSAPはクラウドカンパニーで、事業名をインダストリークラウドとした。

――SAPのクラウド戦略はどのようなものか。Oracleの共同創業者兼CTO(最高技術責任者)のLarry Ellison氏は、クラウドでSAP(とIBM)はライバルではないと言っている。

 われわれのクラウド戦略はまず、包括的な製品をそろえ、顧客に選択肢を提供することだ。現在のように業界の動きが激しい時代、競合他社との戦いで重要な武器は選択肢だ。破壊が起きているときは選択肢が多いベンダーほど価値が大きくなる。例えば実装オプションなら、オンプレミス、パブリッククラウド、プライベートクラウド、ハイブリッドとさまざまな方法を提供し、顧客は自社にとって意味をなす形で実装できる。デジタルエコノミーは始まったばかりだ。あらゆる企業が同時に同じような影響を受けるのではない。

 Ellison氏の言葉については、われわれの成功を認めるものだと理解している。人間の本性としてSAPを懸念しているからこその発言ではないか。好調に終わった第3四半期(2015年7月~9月期)の業績で明らかだろう。われわれはクラウドできちんとした戦略を持っており、その戦略を実行しており、業績の形で成果も出ている。

――業界により異なるだろうが、一般的に顧客はどのような問題を抱えており、クラウドへの障害となっているものは何か?

 私がいるインダストリークラウドは、戦略立案、ポートフォリオ実行という点で顧客が必要としていることを提供する。まずはデジタルワールドが自社にとって何を意味するのかの理解を支援する。これにあたって、顧客はデジタル化でのSAPの見解はどのようなものかを知りたいを思っており、これを提供する。

 顧客はSAPが持つ業界の知識、エンドツーエンドのビジネスプロセスなどのSAPのコア技術を信じており、われわれの技術を利用して自社顧客との関係をさらに強めたいと思っている。その後、SAPがそろえる業界向けのホワイトペーパーなどから何ができるのか、何をする必要があるのかを理解してもらう。

 最高経営責任者(CEO)の90%が何かをする必要性を感じているが、実際に計画があるのは25%、資金を用意して実行に移している比率は15%にとどまっている。理由は単純で、モデルがないからだ。われわれは業界のリーダーとして知識と技術を提供し、モデルの定義を支援する。

 SAPはERPでビジネスプロセスの効率性というイノベーションサイクルをリードした。エンドツーエンドでのビジネスプロセスの統合によりリスクを削減してスピードを増すことができる。現在のデジタルの世界では、競争はビジネスモデルになる。ネットワークは内部プロセスではなく、外部ネットワークになる。

 SAPの戦略としては、デジタル小売とはどのようなものか、顧客中心とはどのようなものか、どの方向性に向かっているのかを考え、モデルを構築している。次に各顧客が現在どの段階にあるのかを診断する。ITは各社により異なり、段階も違う。スタート地点と行き先を示し、そこまでの過程、すなわち”ジャーニー”で、継続的に対話をしながら進めていく。

 障害の1つが複雑性だ。多くの顧客が共通して抱えている課題で、大企業200社の複雑性による機会損失は合計で2370億ドルを超えているというデータもある。SAPではどのようにして顧客がそれぞれのIT環境で複雑性を削減できるのかを考えていくが、共通解は「SAP HANA」だ。HANAはトランザクションと分析を行う単一のプラットフォームで、「シンプル化」へのツールといえる。

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