高速化で実現できる上、クラウド、ハイパーコネクティビティ、ビックデータなどの技術トレンドを利用してビジネスモデルと顧客価値を再構築できる。環境をシンプル化できれば、スピードと俊敏性をもって動くことができ、デジタル化を加速できる。
これまでのリーダーシップは規模、スケール、製品中心だったが、価値はスピード、俊敏性、顧客中心に移りつつある。既存の大企業が規模やスケールをそのままに新しい価値を得ることができれば、勝つことができる。
――SAPの顧客は大企業が多く、必ずしも俊敏とはいえないかもしれない。どうやって顧客にHANAの必要性を説き、モチベートするか。
われわれの業務アプリケーションは大企業で独占的に使われているが、中小規模も多数SAPを利用している。デジタル化が進んだ世界では、小企業が大企業のように展開したり、あるいは大企業が小企業のように振る舞うことができる。これはクラウドが可能にしている。
クラウドにより、複雑性を抱えた大企業でも迅速に動くことができるし、SMBはこれまで考えられなかったような展開が可能になる。競合関係のダイナミクスは確実に変わっている。
――IaaSでスタートしたAmazon Web ServicesがBIに拡大した。AWSの位置付けは? 潜在ライバルと見ているのか?
顧客やパートナーと話をすると市場が見えてくることが多い。これまでそうとは認識していなかったことが競合となったり、逆に提携関係になったりする。顧客やパートナーはAWSを活用しており、われわれはAWSと協業している。われわれはBI市場のリーダーであり、参入企業が増えればBI市場はさらに活性化してシェアも増える。市場にとって競合企業の存在は大切な要素である。
――これまでとは異なるスキルが必要となっている。人材やスキルの獲得はどうやっている? 戦略実行にあたっての課題は何か?
われわれは44年間の歴史があり、3万人のコンサルタントとサポートプロフェッショナルがいる。戦略的、実用的と両方の視点から理解している。このジャーニーに必要な最大のエコシステムも持っている。
業界とビジネスの洞察、ビジネスプロセスなどのコアに加えて、アルゴリズムに取り組むデータサイエンティストなどの専門知識を有する。業界の境界がぼやけつつあり、現在SAPが定義している25の業種は保守的かもしれないとも思っている。例えば、保険なら顧客のリスク管理主導だったのが、顧客のリスク削減が中心になっている。このように業界の新しい考え方にも対応する必要がある。既存を活用しながら、次のレベルに必要なものもそろえている。
クラウドカンパニーになるという計画を数年前に立て、着実に実行しているところだ。重要視しているのは顧客の成功、それに顧客の成功を他の顧客に理解してもらう可視化だ。ある顧客がデジタル戦略に成功し、ビジネスを成長させているという話を知ってもらうことで、次の顧客の成功につながる。