理由(3)下流工程で「いざ!」という時に、PMOメンバー自ら問題解決要員に
それでなお下流工程で問題が起きてしまった場合、そのリカバリができるのはどのような人財だろうか。新業務要件と新システムの設計要件の全体像を理解している人財か、新規に投入するなら、早急に要件をキャッチアップしてプロジェクトを最適化できる人財でなければ難しい。しかし、ユーザー企業、SI共に人財が潤沢ではない状況において、いずれも新規投入は困難だ。
こんな時、システム導入やプロジェクト管理の経験を有するPMOメンバーが要件定義工程に参画していれば、ユーザー企業側支援だけでなく、SI側の一部作業も支援できる。前述の通り、PMOのメンバーは、システム導入の経験持っているメンバーで構成されているから、要件の深い理解があれば、いざというときには手を動かしてトラブル解決にも乗り出すことができるのだ。
「企業とSIの理想の関係」
PMOを有効活用することで、やみくもなベンダー依存から脱却しつつも、プロジェクトの成果を最大化できる可能性がある点を説明してきた。
PMOは、ユーザー企業とSIの関係性を良好に保ちながら、お互いの強みを生かし、最終的に双方にとってメリットを出してプロジェクトを完了させるための触媒のような存在だと筆者は考えている。
最後に、ユーザー企業とSIの関係性を考える時、長年PMOとしてさまざまな企業の各種大型プロジェクトに関わってきた筆者にとっての「理想的な状況」は、以下のようになる。
- 技術領域、役割において適切なSIが選定され、その役割がきちんと果たせる体制になっている。
- SIベンダーの作業が適切に評価され、品質低下、作業遅延などの問題が顕在化する前にアクションがとられている。
- 各SIベンダーの強みが発揮できるよう、苦手と思われる作業はユーザー企業とPMOで巻き取ることができている。
- SIベンダー間の役割分担に目を配り、抜け漏れを調整することでプロジェクト全体のリスクが低減されている。
次回以降は、筆者およびシグマクシスが関わってきた各種プロジェクトのケースを紐解きながら、プロジェクトマネジメントの要点をより具体的に解説する。
- 小室貴史 株式会社シグマクシス P2(Program&Project) シェルパ ディレクター
- 外資系コンサルティングファームを経て2012年シグマクシスに入社。経営管理、管理会計分野を中心とした戦略構想立案、プロセス変革、組織変革のコンサルティングに強みを持つ。流通業、製造業、商社、SIベンダー等に対するパッケージシステム導入のプロジェクトマネージャー、大型システムプロジェクトのPMOリーダーの経験を多数有する。