ビットコイン(Bitcoin)は、この数十年間で唯一の、今後も利用され続けるだけの力を持った代替通貨だと思われるが、ビットコインがもたらした本当に重要な財産は、通貨そのものではなく、その背後にある技術「ブロックチェーン」だ。
ビットコインは、あらゆる銀行や規制組織から独立して機能している暗号通貨(暗号化されたデジタル通貨)として知られている。ビットコインが安全に使えるのは、ブロックチェーン技術のおかげだ。
ブロックチェーンは基本的に、ネットワークのすべての参加者が共有する、ビットコインのすべての取引が記録された元帳であり、データベースだ。参加者全員が取引内容のリストを持っており、ブロックチェーンを通じてビットコインの所有権を確認できる。
ビジネスの世界も、ややゆっくりとはしているが、ブロックチェーン技術を収益化しようとしており、この1、2年で大手の銀行や金融機関がこの技術を試し始めている。しかし今や、ブロックチェーンは他の業界の大企業にも広まり始めており、今度はIBMがこの市場に参入してきた。
IBMは米国時間2月16日、同社のブロックチェーンに関する新たな取り組みについて発表した。開発者向けに「サービスとしてのブロックチェーン」の提供支援を行うと同時に、ブロックチェーン技術を企業で利用しやすくするための支援を行うという。同社はその手始めとして、ブロックチェーン技術の発展を目指す取り組みであるLinux Foundationのオープンソースプロジェクト「Hyperledger」に、4万4000行のコードを提供した。このプロジェクトによって、開発者はビットコイン以外の用途でブロックチェーンを用いた台帳の仕組みを利用する手段を手に入れることができる。
IBMはまた、自社のクラウドプラットフォーム「Bluemix」上で新たにブロックチェーンのサービスを提供することや、IoTデバイスのデータをブロックチェーンで管理する仕組みの統合についても発表している。IBMのプレスリリースによれば、「ブロックチェーンのアプリケーションは、API経由で分散サーバおよび「z System」上に記録された過去のトランザクション記録にアクセスできる。この仕組みは決済、合意形成、サプライチェーン、ビジネスプロセスなどで利用することができる」という。
さらに同社は、東京、ニューヨーク、ロンドン、シンガポールなどの都市で、ブロックチェーンを利用した新しいアプリケーションの設計と開発を支援する拠点として「IBM Garage」をオープンするとしている。
IBMはLondon Stock Exchange Groupやフィンランドの事業開発会社などを含む、「多くのグローバルパートナー」と協力しながら取り組みを進めると述べている。IBMのブロックチェーン担当バイスプレジデントJerry Cuomo氏は、同社はブロックチェーンに可能なことと、実際に企業が必要としていることとの間の橋渡しが必要だと考えていると話す。
「未来の可能性の1つとして、当社は企業のビジネスプロセスを支えるあらゆるブロックチェーンサービスがやりとりされる場を提供できるかもしれない」とCuomo氏は述べている。「あるいは別のシナリオとして、ID管理や合意形成、コンプライアンスなど、アラカルト方式でサービスを提供するということもあり得る」
ここで問題になるのは、IBMの関与は、ビジネステクノロジとしてのブロックチェーンに何らかの影響を与えるのか、ということだ。