クエリーアイと名古屋大学大学院情報科学研究科安田孝美教授・遠藤守准教授の研究グループは、App Storeで販売されているアプリの1時間後のランキングを予測する人工知能に関する共同研究で絶対平均誤差率(MAPE:すべてのレコードの誤差の絶対値の平均)として、7.07%を達成したと発表した。クエリーアイと、システム基盤を提供した日本IBMが3月7日、発表した。
同研究グループでは、ディープラーニングによるアプリストア市場予測で70%の正答率を達成したことを2014年12月の情報処理学会で発表している。また、時系列処理を前提としたリカレントニューラルネットワークを適用することで、予測精度の向上や、他事業分野での応用がより柔軟になると考え、さらなる研究を推進してきた。
今回、成果の応用例としてApp Storeのランキングに掲載された1年間の全アプリの各種データ、Twitter、ウェブページなどから、1時間後のアプリのランキングを予測するシステムをIBMのパブリッククラウドサービス「SoftLayer」上に構築した。SoftLayerで利用できる物理サーバ上にGPU(NVIDIA Tesla K80)を搭載して、機械学習にかかる時間を大幅に短縮した。
クエリーアイは機械学習の最先端分野であるリカレントニューラルネットワークをマーケティングに応用しており、2010年からはApp StoreのアプリランキングとTwitterやニュースサイト、ブログなどからApp Store上のアプリへの個別リンクが時間とともに増減する様子を追跡、データベース化している。
- TechRepublic
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また、これらからアプリの売れ行きが各種情報の増減と相関性があることの研究も進めており、このデータの中から有用なデータを機械学習させることで、市場予測モデルを形成した。
このシステムは入力データとして過去のアプリのランキング変動とアプリのダウンロードURLへのリンク増減変動を用い、予測として1時間後のランキングを出力する。今回の研究では、この予測値と実際の市場の値とのMAPEが7.07%となった。
こうした成果から、新システムでは高精度な市場予測を高速に実施することに加え、ソーシャルメディア上で商品情報の拡散が重要と考えられているバイラルマーケティングの施策において、ディープラーニングとリカレントニューラルネットワークが応用できる可能性が高いことが示されたとしている。
今回の成果は、モバイルアプリだけではなくさまざまな商品やサービスの売れ行き動向の時系列変動にも応用ができる基本的な考え方としてとらえられるという。クエリーアイは、研究成果を応用した人工知能サービスを、柔軟にインフラを拡張できるSoftLayerをベースに実装することで、迅速に事業を展開していく。