海外コメンタリー

IBMフェローが見る「Watson」の今後とコグニティブコンピューティングの世界 - (page 3)

John Morris (ZDNET.com) 翻訳校正: 藤本京子

2016-04-12 06:30

高度なコンピューティングパワーが必要

 このほかにも展示フロアにてIBMは、CPUの「POWER8」を2基搭載したサーバに「Tesla」GPUを追加することで、コンセプト洞察機能である「Watson Concept Insights」が同時にインデックスできるドキュメント数を7から60にまで増やすことが可能となり、トレーニングにかかる時間が8.5倍速くなるとのデモを行っていた(このデモでは、やり過ぎではあるが旧型GPUと倍精度演算も利用し、実際には例えば半精度演算の「Tesla P100」8ウェイサーバを強化した方が桁違いに数値が大きくなることも示していた)。これによりWatsonは、学習した内容から類似したコンテンツをレコメンドできるという。デモでは、IBMが昨年度のGTCにおける基調講演のビデオをアップロード、Watsonが発話をテキスト化する機能とConcept Insights機能を駆使し、TEDカンファレンスの講演からAIのコンセプトに関する同様の内容を扱った講演をレコメンドする様子が披露された。IBMでは、OpenPOWERアーキテクチャを最適化することで、推論の速度を40倍にまで高速化できたとしている。

 OpenPOWERコンソーシアムは、2015年もGPU Technology Conferenceにてサミットを開催、メンバー企業からの新たな発表もあった。中でも際だったのは、GoogleとRackspaceが提携し、「Zaius」というサーバを開発すると発表したことだ。Zaiusは、IBMのCPU「POWER9」2基およびIBMのCAPI(Coherent Accelerator Processor Interface)、さらにはNVIDIAのNVLinkインターコネクトを搭載し、Open Compute Projectに貢献するという。同サーバは、Googleが3月にOpen Compute Projectに寄贈した48Vラック設計に対応する。

 また、Rackspaceは既存のPOWER8サーバである「Barreleye」がOpen Compute Projectに受諾されたことも発表。さらにIBMは、NVIDIAおよびODM業者のWistronと共同で、NVLinkを利用してTesla P100 GPUと接続したPOWER8ベースのハイパフォーマンスコンピューティングサーバを開発中だと発表した。同サーバは、第4四半期に市場投入される予定だという。

 こうした発表内容からもこの分野の発展が見込まれているが、High氏は基調講演にて、コグニティブコンピューティングは単独のハードウェア技術によるものではないと述べている。同氏によると、コグニティブコンピューティングとは、さまざまなアーキテクチャやサービスが組み合わさり、新たなアプリケーションが誕生することで成り立つという。こうして生まれたアプリケーションは、正式なトレーニングや非公式なトレーニングはもちろん、人と人との自由な交流、信頼度の高い専門性を詰め込むこと、そして人と機械の新たな関係性を構築することなどにより発展していく。

 High氏は、コグニティブコンピューティングが同氏の予想よりも速く発展していると見ており、現在コンピュータのワークロードの大半を占めるトランザクション処理のワークロードを超える日が来るだろうと述べている。High氏が言うには、オフィスでも家庭でも車の中でも、スマートフォンなどのガジェットがコグニティブコンピューティングへと移行していく日はそう遠くないとしている。

この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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