SAS Institute Japanは5月11日、都内でアナリティクス専門カンファレンス「SAS Forum Japan 2016」を開催。基調講演では、SAS Institute Japan 代表取締役社長 堀田徹哉氏と、米本社の最高顧客責任者(Chief Customer Officer:CCO)でエグゼクティブバイスプレジデントのFritz Lehman氏が登壇し、マーケティング向け新製品「SAS Customer Intelligence 360(CI 360)」とアナリティクス基盤製品「SAS Viya」の必要性を強調した。
堀田氏はSAS Forum Japan 2016への参加登録者が昨年を大幅に上回る約2200人、17社によるパートナーからのスポンサードを受けたことをアピールしつつ、創業当初から100社の顧客が今現在も顧客であり続けている理由を「時代ごとのアナリティクスに求められる顧客ニーズへ真摯に応えてきた」と説明する。
SAS Institute Japan 代表取締役社長 堀田徹哉氏
Lehman氏は自身がSAS Instituteに入社して32年、同社が2016年で創業40周年を迎えたことを絡めて、会社とともにアナリティクスの歴史を歩んできたと自身を紹介し、「今、市場で何が起きているのか。どのような顧客の声があるのか」というテーマについて語った。
Lehman氏は現状を「データが爆発的に増大し、その速度は加速している」と説明している。例えば2012年時点でのFacebookにアップロードされる画像が1秒あたり約3000枚であることから、1日あたり2億5000万枚にもおよび、2016年現在はさらに拡大傾向にある。
さらに写真や動画、音楽などもビジネスデータとして扱われるようになったことを理由にデータが増加傾向にあることを説明。データソースの拡大理由として、スマートフォンの位置情報サービスや自動車に組み込まれたセンサもデータを生成する存在となり、世界中のデバイスがデータを生成している現状を訴えた。
SAS Institute CCO兼エグゼクティブバイスプレジデント Fritz Lehman氏
また、データを閲覧するタイミングやユーザーの意識も変わりつつあるという。スピードを重視するリアルタイムデータと、必要に応じて対応するニアリアルタイムデータなど、データの種類や内容の増加による多様化。データサイエンティストは自身でコーディングし、データに直接触れるが、経営者はアナリティクスの結果だけを見たがる。
このようにデータを扱うスタイルも多様化傾向にあるという。Lehman氏は4つのキーポイントを並べてSASの具体的な対応を次のように紹介した。
1つめは「Apache Hadoopの活用」。大規模データを分散処理する、Javaベースのソフトウェアフレームワークを活用することで、アナリティクスをデータとともに存在させるという。2つめは「SAS ESP(Event Stream Processing)」。2015年7月から提供を開始したビッグデータをリアルタイムにストリーミングとアナリティクスの処理を担う。
3つめは「インメモリアナリティクス」。SAS独自のインメモリ処理エンジンを利用することで、応答時間の短縮や分析ライフサイクル全体をインメモリ化し、多くの用途に幅広くアナリティクスを活用する。そして最後は「ビジュアライゼーション(可視化)」。SASが提供するすべての製品に盛り込まれているものだが、これも将来につながるものだとLehman氏は説明した。
SASが顧客からの要望に応える形で提供するのが「SAS Global Forum 2016」で発表したViyaとCI 360である。同社はViyaを将来のプラットフォームに位置付け、Pythonに代表されるオープンソース系言語やスクリプト言語のLua、幅広く使われているJavaをベースにViyaが用意するAPIにアクセス可能であると説明。Viyaはパブリッククラウドやプライベートクラウドでも動作し、Lehman氏は現行の「SAS 9」と連携可能であるため、早期に移行する必要はないと語った。
Viyaのデモンストレーションとして、Pythonを使ってアナリティクスAPIを呼び出し、分析結果を披露した
SAS Visual Analyticsのベータ版も披露。エンジンを刷新し、マップを使った分析機能を改善した
CI 360については、マーケティング担当者が抱える「パッケージの分断化」を解決するためアクセス解析ツールとオーケストレーションなどを行うパーソナライズツール。まずはアーリーアダプター向けに興味を持ってもらい、2016年末までには提供すると説明した。
その他にも同社はIoT時代におけるデータ管理への取り組み、2016年末にはアジアでも展開するセキュリティを前提にしたサイバーアナリティクスを実現し、人間のような意思決定を目指した人工知能(AI)分野など、多種多様なアナリティクス活用方法を提供して、新しいアナリティクス体験の実現を目指すと述べた。