「データをデジタル化した暁にはどこでもわれわれの得意領域」
SAS Institute Japanの社長を務める堀田徹哉氏は話す。IoTにおけるセンサの急増によって製造業、小売業などさまざまな業種で今後データの増加が見込まれている。そのIoTや、金融とテクノロジを交えるFinTechといったトレンドに沿って、統計解析ソフトウェアというイメージの枠組みを超えてデータ分析の需要を取り込もうとしている。堀田氏に話を聞いた。
SAS Institute Japanの堀田徹哉社長。アクセンチュアやSAPを経て、2015年10月から現職。ワールドワイドで39年連続売り上げ成長を果たしており、好調な業績を背景に今年は六本木ヒルズの本社を増床する予定だ。
--製造業におけるIoTの動きとして、ドイツを中心とする「Industry 4.0」と米国のGEなどを中心とする「Industrial Internet」の2つのコンソーシアムがあり、製造業の未来形を探ってきましたが、先日、両者がともに歩調を合わせるとの発表がありました。こうした動きについて、日本への影響も含めてどんな印象を持っていますか?
メーカー、サプライヤー、そことつながる部品メーカー、さらに素材メーカーを含めた長いバリューチェーンを、センサを軸にインターネット経由で統合し、一元管理するという壮大なプロジェクトです。
導入すれば、生産プロセスにおける品質管理、歩留まりの把握、生産リードタイムの削減など、全体最適の視点からさまざまな効果が期待できます。SASも、データ分析という面でメインプレーヤーとして参画できる領域と考えます。
ただし、本当に壮大なプロジェクトになるので、投資対効果が得られるかという点は、現実的な課題になるでしょう。ドイツなどは、大手企業のほとんどがSAPのソフトウェアを使っていることなどから、企業同士をつなげやすいですが、日本メーカーの多くは少し様子が異なります。
日本における「インダストリー4.0」のこれまで
Industry 4.0などは、ある意味でドイツの産業政策のようなところがあり、必要以上に日本企業があおられるのもどうなのかとは思いますが、1980年代にトヨタ自動車のカンバン方式やカイゼン、ケイレツ、ジャストインタイムなどの仕組みを取り入れ、ある意味で独自のやり方で「昭和版インダストリー4.0」をつくりあげてしまっているところがあります。
それをデジタル化してオープンにできるかという点には、ハードルがある気がしています。であるがゆえに、素直にテクノロジを受け入れて企業間をまたぎながら全体としての最適化を目指すというやり方では、遅れてしまうのではないかというトーンがあり、それは確かにそうだと感じています。
改めて莫大な投資をすることで、センサやインターネットの技術をベースにしたサプライチェーンを作り直すことで、確実に効果が出ますが、果たして本当に費用対効果を説明できるかどうかは、現状では明確ではないでしょう。
例えば、トヨタなどなどがそうした仕組みを取り入れ、これまでに付き合いのなかった(コスト優位を持つさまざまな)サプライヤーと付き合うようになれば、今度は日本のサプライヤーが苦境に立たされます。
逆に言えば、大小さまざまなサプライヤーが協力する方が効果は高くなるわけであり、Industry 4.0とIndustrial Internetの両陣営が、相互に通信するための国際規格をつくるために連携する(3月初旬に発表)とした理由も、そこにあると考えられます。日本メーカーも、後追いになるくらいならば、今からこうした仕組みに沿って一緒に活動した方がいいかもしれません。
IoTの適用はまだまだ進むので、企業間をつなぐIndustry 4.0などを促進する動きは今後も続くと考えられます。