本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉をいくつか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、SAS Institute Japanの北川裕康 執行役員と、IIJの勝栄二郎 代表取締役社長の発言を紹介する。
「機械学習は、将来の結果を予測するシステムの構築を自動化する」 (SAS Institute Japan 執行役員 北川裕康 氏)
SAS Institute Japanの北川裕康 執行役員 マーケティング本部兼ビジネス推進本部 本部長
SAS Institute Japanが先ごろ、機械学習(マシンラーニング)によるデータ活用ソフトウェアの新製品として、予測モデリングを自動化する「SAS Factory Miner」とテキスト分析が可能な「SAS Contextual Analysis」を国内で提供開始すると発表した。北川氏の冒頭の発言は、その発表会見で、SASによる機械学習の定義を端的に表したものである。
2つの新製品はいずれもSASならではの機械学習テクノロジを搭載し、高度な分析アルゴリズムの専門知識を持たないビジネスユーザーでも、機械学習による価値を迅速に得ることができるように設計されているという。また、ポイント・アンド・クリックによる簡易な操作性と、予測モデル作成プロセスの自動化およびインメモリ機械学習エンジンによる高速化によって、迅速な意思決定とビジネス価値の創出を強力に支援するとしている。
新製品の詳細な内容については他稿に委ねるとして、ここでは北川氏が語ったSASの機械学習の解釈に注目したい。同氏は機械学習について、SASでは次のように定義していると話した。
「機械学習は、人工知能の分科であり、さまざまなアルゴリズムを用いてデータから反復的に学習し、パターンを認識して、将来の結果を予測するシステムの構築を自動化するものである。このプロセスにおいて人間の介在は最小限でしかない」
そして、この定義の中でとくに機械学習のキーワードとなるのは、「アルゴリズム」「反復的」「自動化」の3つだと説明した。冒頭の発言は、この定義のエッセンスを示したものである。
ちなみに、世界大百科事典 第2版の解説によると、機械学習は「コンピュータやロボットなどの機械に、自動的に概念や行動プログラムを学習させる研究分野」と記されている。SASの定義は、この一般的な解釈における研究分野の中で、とくに「予測分析」における機械学習にフォーカスしたものと見て取れる。
北川氏はその文脈において、機械学習を予測分析に活用すると、次のような効果を得ることができると語った。
「データ分析者やアナリストにとっては、機械学習におけるアルゴリズムや自動化、使いやすさといった点が、予測分析をスムーズに進める効果をもたらす形になる。また、データサイエンティストにとっては、機械学習を活用することで、より高度な予測分析が可能になる」