HANAは高価?認定問題に切り込む――「ナンセンスだった」
Plattner氏は、「HANAが高価という大きな問題」についても説明した。2010年にHANAをスタートした時、「プロセッサなど特別に設計されたマシンが必要だった」ことから、当時Plattner氏の片腕として開発を進めてきたVishal Sikka氏(2014年にSAPを去り、現在InfosysのCEOを務める)と、アプライアンスとしてスタートすることを決定したと経緯を明かした。
「ハードウェア認定プロセスで官僚主義が生まれてしまい、ハードウェアベンダーは(認定ハードウェアを)高価に販売するようになった」とPlattener氏。「これはナンセンスだった」とした。HANAは標準のx86上で動き、さまざまなハードウェアがあるが、XS/S、M/L、XL/XXLと大きく3つに分類した。

RAMとソケットなどからXS/S(左)、M/L(中央)、XL/XXL(右)の3つのサイズがあるが、48%がXS/S、38%がM/L、わずか14%がXL/XXLとした
なお、ハードウェア価格については、「現在が一番安い」とPlattner氏は言う。SAP社内では最新のハードウェアにアップグレードしたところ、S/4 HANAのレスポンス時間が0.7秒になったという。「90年代前半、R/3で必要以上のスペックのハードウェアを利用していたとき以来のパフォーマンス」とのことだ。
PaaSのHCP上にたくさんのアプリが生まれている
これからのエンタープライズシステムとして、Plattner氏は2015年のSAPPHIRE NOWで披露した「Digital Boardroom」を始め、いくつかのアプリケーションを紹介した。

7年前に最初に披露したときは理解されなかったという「Digital Boardroom」。Plattner氏のお気に入りのアプリケーションで、「これが将来」と言い切る。リアルタイムの情報を表示するコラボレーションのためのマルチファンクションディスプレイで、複数の人がそれぞれの立場から問題解決に向けてコラボレーションできる。SAPが社を挙げて実践するデザインシンキングから生まれたアイディアだという
通貨レートや原油価格などを変えて業績の影響をシュミレーションする「Value Drive Tree」も紹介した。America’s Cupなどボートレースで利用されており、ボートの形、特定の環境での速度などを利用した数学的モデルにより、予測の精度は誤差2%程度という。
S/4 HANAの拡張性の例としては、プロトタイプ段階にある「Financial Statement Insights」と「RealSpend」を紹介した。

「Financial Statement Insights」損益を時系列でビジュアル化し、動的にヒエラルキーを適用できる。ドリルダウンして詳細な情報を得ることができ、P&Lのトレンドを見出すことができる
これらはPaaSの「HANA Cloud Platform(HCP)」上で構築したアプリケーションで、「これが新しい世界だ」とPlattner氏は胸を張る。
会期中発表したカタログ「SAP API Central(旧SAP API Hub)」を用意し、ERPシステムやその他のシステムから必要なデータをメッシュアップしてアプリを構築できるとPlattner氏。「たくさんのアプリが出てきている。これまでの伝統的なSAPのアプリとはまったく関係がないものもある」とHCPのエコシステムが育ちつつあることをアピールした。