SAPが5月初めに開催した年次カンファレンス「SAPPHIRE NOW 2015」。大きなテーマとなったのはモノのインターネット(IoT)だ。IoTにはさまざまなアプローチがあるが、ビジネスの場合、根幹の基幹業務システム(ERP)との連携なしにはメリットを最大化できない。
SAPはこれに加え、それをさらにビジネスネットワーク、すなわち企業が取引できる場で補完するという壮大なシナリオを描いている。会期中、SAPでグローバル顧客オペレーション担当最高技術責任者(CTO)を務めるIrfan Khan氏にSAPのIoT戦略について聞いた。
――HANA Cloud Platform for IoTを発表した。
SAP グローバル顧客オペレーション担当CTO Irfan Khan氏
HANAは5年以上前から市場に出ている技術だ。HCPはHANAベースのPaaSで、IoT分野でSAPはすでに「Connected Logistics」「Connected Manufacturing」「Predictive Maintenance and Service」などのサービスやソリューションをHCP上に構築している。
今回発表したのは開発者向けのサービスで、HCP側に必要な技術を全て備える。開発者はこれを利用して全く新しいIoTのシナリオを構築できる。
――Siemensとの提携はどのようなものか?
Siemensは自社のIoTプラットフォーム構築にあたって、SAPと提携した。Siemensは産業機器メーカーであり、多数の工場の製造プロセスで同社のマシンや機器が使われている。今回IoTクラウドを提供することで、Siemensの顧客や提携企業は、製造工程からショップのフロアまでS/4 HANAを中核としたHANAのコアにエンドツーエンドで結びつけることができる。
――HANAベースのIoTの事例は?
ドイツのエアコンプレッサーメーカーは、これまで製品を提供していたが、ビジネスモデルを変革し、製品は無料で提供して圧縮した空気に課金するというモデルをとった。製品ではなくサービスを、成果を売る例といえる。
バイクのHarley-Davidssonは、HANAとセンサを利用して製造プロセスを大きく変革した。製造機器に取り付けられたセンサで稼働状況を測定し、さまざまな種類のバイクを短期間で製造できるようになった。同社の顧客はさまざまなカスタマイズをしたバイクを注文するが、製品が必要とするパーツは全て異なる。
製造ラインの変更に時間がかかっていたという問題を解決しただけでなく、工場の面積は半分以下になった。それまでは生産計画を数週間前に締め切っていたのが、6時間前になり、人による作業は30%削減できた――つまり30%効率をアップできたことになる。