IBMは「IBM Brokerage Services」のローンチによってシステムインテグレーターからサービスインテグレーターへの道に進もうとしている。これは同社が「Amazon Web Services」(AWS)や、「Microsoft Azure」「Google Cloud Platform」のリセラーになるということをも意味している。

IBM cloudMatrixにおけるクラウドプロバイダーの比較画面
IBMはシステムインテグレーターとして有名だが、今後はクラウドブローカー色を強め、自社の「IBM SoftLayer」を提供するだけでなく、リセラーとしてAWSやMicrosoft Azureを提供する窓口になるという、いわゆるサービスインテグレーターへの道に進んでいこうとしている。
IBMの戦略:サービスとしてのITを推し進め、その製品である「IBM cloudMatrix」を、社内インフラとともにパブリッククラウドプロバイダーへの窓口に位置付ける。なおcloudMatrixによって、アプリケーションやクラウドアーキテクチャに関する費用やコストモデルも浮き彫りになる。
一見するとcloudMatrixは、IBMが2015年11月に買収したGravitantによって提供されていたサービスをリブランディングしたものにしか見えないかもしれない。しかしそのサービスの内部では、IBMのさまざまなプラットフォームツールとの統合が図られ、クラウドを最適化するうえでのベストプラクティスをより明確に浮き彫りにするためのスケーラビリティがもたらされている。
クラウドブローカーという考え方は、今日ではそれほどユニークなものではない。筆者は2010年に、この考え方が将来有望だとする記事を執筆している。詰まるところ、あらゆる企業の眼前には数多くのパブリッククラウドプロバイダーが選択肢としてひしめくことになるため、クラウドブローカーを活用すれば、必要になった時点で最高の契約を取り上げ、コストを最適化し、プロバイダーを選択できるようになるわけだ。コストを最適化するうえで、AWSやGoogle、IBM、Microsoftのサービスを使い分けるのが理想となるはずだ。
ただ、クラウドブローカーによる理想郷は、この業界がここ数年で幾分か成熟したとはいえ、実現されていなかった。なぜ今になってクローズアップされているのだろうか?IBMのグローバルテクノロジサービス部門のゼネラルマネージャーRichard Patterson氏は「組織や業務部門が成熟し、外部クラウドを活用できるようになってきた」と述べた。
IBMにとって、サービスインテグレーターへと軸足を移すことが必要不可欠なのだ。まず、IBMのサービス部門は業績の伸び悩みに苦しんでいる。また、クラウドは重装備なシステムと、それに関連するコンサルティングの必要性をなくしてきている。とは言うものの、ハイブリッドクラウドにおいては、いまだに多くの統合作業が必要となっている。