展望2020年のIT企業

日本のIT産業がいびつな理由

田中克己

2016-07-21 07:00

 「世界のIT産業の方向性や事業ポートフォリオなどから見て、日本のIT産業はメチャクチャにいびつだ」。ITコンサルティングを展開するフューチャーアーキテクトなどを傘下に抱える持株会社フューチャーの金丸恭文会長兼社長(グループCEO)は、日本のIT産業の問題点を指摘する。同氏の発言などから、IT企業が進む道を探ってみる。

保守的なIT投資スポンサー

 同社が株式公開を果たしたのは1999年のこと。ITコンサルティングサービスを掲げた初のIT企業だったが、金丸会長は「そんな事業内容はない」と言われたことを今も覚えている。指摘通りか、「マーケットは広いと思ったが、現実は広くなかった」。

 革新的なIT活用に挑戦するユーザー企業が少なかったということだろう。背景には、ユーザー企業のIT活用力とIT産業の構造問題があるという。

 1つは、「大きなIT投資をする国や地方自治体、金融などの活用が保守的なこと」(金丸会長)。投資額や投資先にも課題がある。たとえば、メガバンクをはじめとする金融機関の「攻めのIT投資」が少ないこと。ITを駆使した金融サービス競争が世界で起きている中で、日本の金融機関は基幹系に多くの投資を振り向ける。

 「攻めのネタがないので、老朽化対策になっている」(金丸会長)。メインフレームをクラウドなど新しい環境に移行させるのも容易なことではないだろう。

 もちろん、決済などの新しい金融サービスの開発に取り組む金融機関はいる。例えば、FinTeckベンチャーに資本参加するなど協業を活発化させているが、問題は顧客満足度の向上や競争優位の獲得など経営戦略における位置づけにある。「金融庁が言うので、やっていますか」という“みせかけ”だったら話にならない。

 もう1つは、先端IT活用をけん引する軍需の存在。そこから得られる基礎技術や応用技術があるかだ。米国や中国、ロシアなどに比べたら、日本は“ゼロ”に近いかもしれない。

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