研究現場から見たAI

考えるロボットは実現するか--歴史から学ぶ人工知能との未来 - (page 2)

松田雄馬

2016-08-08 07:00

 現在のロボットの原型と思われるのが、1927年に米ウェスティングハウスが作成した「テレヴォックス」という機械である。

 電話による操作で、遠隔地の電灯を点滅させたり、扇風機、掃除機を作動させたり止めたりできるものであった。この機械自体は、人型ではなかったが、内部の動作原理そのものは「ロボット」と何ら変わることはない。そして同年、英国で「エリック」という人型ロボットが発表され、世界に衝撃が走った。

 エリックは、電気モータで駆動されているだけであったが、立ち上がって左右を見渡し、手を上げ下げし、さらに人間の言葉をしゃべったのである。実は、人間の言葉は、無線により送られてきた人間の言葉を出力しているだけなのだが、自分自身がしゃべっているように動くことで、あたかも自分でしゃべっているように見えたのである。

 この様子に世界中の人々が歓喜し、ジャーナリズムの喧伝、人々の期待の高まりが相まって、ロボットブームが始まったという。このブームは日本にも波及し、1928年に昭和天皇の即位を記念する「御大礼記念京都博覧会」に大阪毎日新聞社が西村真琴博士の「学則天」という人造人間を出品している。

 この時代のロボットブームでは、デパートの宣伝にロボット人形が使われ、雑誌「新潮」の特別企画で「人造人間幻想」という対談が川端康成らによって行われるなど、かなりのフィーバーぶりであったと言われている。

 この「第1次ロボットブーム」と呼ぶべきロボットブームの時代、現代の人工知能ブームにも通じる空気が、形成されていたのではないだろうかと考えられる。

第1次ロボットブームはどのように収束していったのか

 「賢者は歴史に学ぶ」という言葉の通り、1920年代のロボットブームのその先を知ることで、現代の人工知能ブームの未来が見えてくる。

 さて、米国出身の「テレヴォックス」と英国出身の「エリック」が火付け役となって発生した、1920年代のロボットブームであるが、このブームは、1930年代には急速に冷え込んでいく。この時代のロボットは、あくまで人間の形状や動作を真似ただけであり、多くの人がロボットを見慣れることで、その本質に気づいていったのである。この時代の朝日新聞に掲載された評論の1つが、まさに、この時代の人々の本音を素直に表現している。

 「現代機械文明で必要とされているのは、人間が持たない力、人間にない動作スピード、人間にない敏感さ、人間にない緻密さなのであり、何か悲しくて人間のようなロボットを作る必要があるのか」

 当時のロボット研究が、「人間の真似をする」ことに特化しており、このことで、人々は「機械にできて人間にはできないことが一体何なのか」という疑問に向き合うようになった、と結論づけることができるのではないだろうか。

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