矢野経済研究所は7月19日、国内のシェアリングエコノミー(共有経済)市場の2016年調査結果を発表した。調査は4~6月にかけて実施され、シェアリングエコノミーサービス提供事業者等を対象とした面談や電話・メールなどによる取材を中心とした。それによると、2015年度の国内シェアリングエコノミー市場規模は前年度比22.4%増の285億円という。
シェアリングエコノミー(共有経済)国内市場規模推移と予測 (サービス提供事業者売上高ベース。2016年度は見込値、2017年度以降は予測値)
同社では本調査において、不特定多数の人々がインターネットを介して乗り物・スペース・モノ・ヒト・カネなどを共有できる場を提供するサービスのをシェアリングエコノミーと定義(音楽や映像のような著作物は共有物の対象にしていない)。シェアリングエコノミーサービスと従来からあるレンタルサービスとの大きな違いは、ユーザー(共有者)が主体となって共有経済圏を作り上げている点であるとした。市場規模としてはサービス提供事業者売上高ベース、すなわちサービス提供事業者のマッチング手数料や販売手数料、月会費、その他サービス収入などとして算出した。
主な調査結果は以下の通り。
2015年度の国内シェアリングエコノミー市場規模は前年度比22.4%増の285億円
2014年には、UberやAirbnbなどの海外で先行的に普及したシェアリングエコノミーサービスが日本市場に参入した。その動向や話題性の高さなどから、シェアリングエコノミーサービスを試験的に利用する人が増加し、2014年度の国内市場規模は前年度比34.7%増の232億7500万円(サービス提供事業者売上高ベース)となった。
2015年度は旅館業法の特例が施行されたことで民泊市場に参入する事業者が増加。モノのシェアリングエコノミーの分野でも、ファッションシェアリングサービスが次々と開始された。その他、クラウドファンディングの利用も増加しており、2015年度の国内市場規模は前年度比22.4%増の285億円(サービス提供事業者売上高ベース)となった。
なお、サービス分野別に見た場合、最も市場規模が大きいのは乗り物のシェアリングエコノミーサービで、その中でもカーシェアリングが大部分を占める。カーシェアリングは、国内に登場したのが2002年と古いこともあり、2014年頃から提供が開始されたその他のシェアリングエコノミーサービスと比較して市場規模が大きい。一方、乗り物のシェアリングの中でライドシェアの占める割合はまだわずかである。
増加する訪日外国人客によるシェアリングエコノミーサービスの利用が拡大
2016年度は旅館業法施行令が一部緩和された上に、2017年の通常国会に民泊新法が提出予定であることから、それに向けて民泊市場への参入事業者やサービスの利用者がさらに増加していくと同社はみている。また、法規制の壁が特にないオンライン駐車場予約サービスの利用が堅調に増加していくと見込んでいる。2020年の東京五輪に向けて訪日外国人客の増加が見込まれるが、こうした訪日外国人客が、民泊、オンライン駐車場予約サービス、ライドシェア、オンラインマッチングサービスなどのサービスを利用していくと予測。
これらにより、シェアリングエコノミー国内市場規模全体の2014年度から2020年度の年平均成長率(CAGR)は17.1%となり、2020年度には600億円に達すると同社は予測した。