電通は、デジタルマーケティング専門の新会社「株式会社電通デジタル」を設立、7月1日より営業を開始した。電通デジタルは、電通の「デジタルマーケティングセンター」に、グループ会社である電通イーマーケティングワンとネクステッジ電通が1つになった企業。最近ではPwCコンサルティングと共同開発したデジタル変革推進プログラムの提供を開始し、デジタル変革を担っている。今回は、同社の執行役員CIO(最高情報責任者)である松本卓一氏と執行役員CCO(チーフコミュニケーションオフィサー) である小川比佐子氏に話を聞いた。
――電通デジタルを設立した目的は。
小川氏 目的は2つあります。1つ目は、ITの浸透が生活のあらゆる局面を快適にする「デジタルトランスフォーメーション」に企業として対応するためです。現在は生活者が誰よりも早くソーシャルメディアやスマートフォンを使いこなすなどデジタルトランスフォーメーションに対応しています。メディアとの接触の仕方や日々の生活の仕方も変わってきています。当然、われわれの顧客も、デジタルトランスフォーメーションに対応しなければなりません。そうした変化に対応しサービスを提供するために会社を設立しました。
電通デジタル 執行役員CCO(チーフコミュニケーションオフィサー) 小川比佐子氏
2つ目は、フレキシブルな人事配置に対応できるようにするためです。非常に変化の速い世界ですので、必要な人材もそのタイミングで求められます。そうしたフレキシブルな人事策は、電通では組織が大きくてできません。この2つの理由から、電通デジタルは分社化しました。まずは、しっかりマーケティング担当役員(CMO)に寄り添い、CMOから信頼される会社になることを目指しています。
――顧客がデジタルトランスフォーメーションに対応するために、例えばマーケティングオートメーションを導入するケースもある。システムの導入にはどのように対応しているか。
松本氏 システム導入のプロフェッショナルと連携しながら取り組んでいくと思います。われわれがもともと担ってきたマーケティングコンサルティング業務では、上流の戦略から開発実装、実際の運用まで請け負っていましたが、ITやシステムも、その対象範囲になってくると思います。特にCMOが中心となってデジタルマーケティング戦略を考える場合、私たちはテクノロジに対して中立に接していく立場です。そのため、IBMのマーケティングオートメーションと連携することもできますし、アクセンチュアのようなコンサルティング会社ともある意味では協力することも可能だと思っています。
実装に関しては電通グループに電通国際情報サービス(ISID)というグループ会社もあります。単に電通デジタルだけではなくて、ある程度開発を担う段階になってきた場合についてはISIDとも連携しますし、外部の優れた企業があればそちらでもかまいません。クライアントの最終的な総合的マーケティングを実現していくためのサービス領域を担っていくことが基本的な方針です。
小川氏 こうした取り組みは、今までもやってきたのですが、やはり電通はマスメディア、テレビの広告を売る会社と思われている部分がある一方、われわれは、メディアを取り扱って広告を売ることはしません。これが大きな差だと思います。もちろん、CMOの課題を解決する最良の方法がテレビである可能性もありますが、基本的にマスメディアの買い付けは行わない方針です。
松本氏 宣伝部長イコールCMOであった時代は良かったのでしょうけれども、これからのCMOの課題は、完全にマスマーケティングはOne of Themで、担っている課題も広がってきて、そこに対応するためには今までのマスマーケティングのシステムでは駄目です。そこを変えられる会社であるということです。