2016年度の「情報通信白書、「IoT・ビッグデータ・AI~ネットワークとデータが創造する新たな価値~」を読み解く、連載の2回目である。
公共分野でのICT活用の現状と未来
公共分野での課題については、既存のICTをさまざまなアプローチで活用して解決する試みが始まっている。既存のスマートフォンやクラウドプラットフォームの普及を踏まえたものから、実証実験レベルのものまで多くの事例が紹介されている。
医療分野は、ICTで大きく変わる可能性のある分野である。医療や介護現場での情報共有、医療情報の分析などICTを活用できる変化は幅広いが、幾つかの事例が紹介されている。
まず、医療情報共有のプラットフォームがいくつか提供されている。MySOSは患者自身が利用するもので、緊急連絡先、既往症、内服薬、健康診断結果などを一元的に管理できる。Joinは医療従事者向けのコミュニケーションのためのもので、テキストだけでなくCTなどの画像、映像などを送受信できる。
専門医への遠隔での相談なども可能になる。Teamはさまざまな業種がいる介護現場で多業種間の情報共有を可能にするクラウドシステムで、地域包括ケアシステムの支援ができる。これらは実際に現場でひんぱんに利用されている事例があるほか、救急医療の「たらいまわし」などの問題の解決も期待できる。また、「Join」については実際に総医療費の削減の効果も出始めており、医療機器プログラムとしての認証を受けたことから、導入の前向きな検討が進んでいる。

MySOSの利用イメージ 出典:「平成28年版情報通信白書」(総務省)

Joinの利用イメージ 出典:「平成28年版情報通信白書」(総務省)
患者のデータ管理に関しては、多数の関係者がパーソナルデータを利用する際にリスクやコストがかかる。これをスマートフォンとクラウドの利用によって暗号化して患者自身が管理する「PLR」(個人生活録)が提唱されている。これにより、運用コストも低くなり、多くの患者の情報が一斉に漏えいするリスクも低減できる。

集中管理と分散管理の比較イメージ 出典:「平成28年版情報通信白書」(総務省)