製造業は、これまでのように生産した製品を販売することで稼ぐのではなく、製品をサービスとして提供することによって稼ぐ時代に変わってきている。この新たなビジネスモデルは「サービタイゼーション」と呼ばれている。本連載では、製造業がサービタイゼーションを推し進めるためのポイントを紹介していく。
現在米国、欧州を中心に急速に広まりつつある新しいサービス事業に対する考え方「サービタイゼーション」。前回は、サービタイゼーションとは何なのか、なぜこのような概念が誕生したのかについて考えてみました。今回は、サービタイゼーションに向けて何から着手すべきかという視点で考えてみたいと思います。
前回も説明しましたが、製造業を取り巻く環境に大きな変化が見られます。プロダクトのコモディティ化であったり、製造モデルの変革であったり、またはガラパゴス現象などが挙げられ、こういった環境の変化に対応するため、多くの製造業は事業戦略の中心を従来の川上(設計・製造・商品開発など)中心の経営戦略から、川下(流通・販売を含めた顧客接点)へと移行しようとしています。
ただ、この「川下戦略」にもいくつかのステージがあり、一足飛びに完成するものではないようです。ここでは「川下戦略」のそれぞれのステージごとに、直面する課題とその対応策のヒントを探ってみたいと思います。
第1のステージは「サービス事業の収益化」、つまりコストセンターからの脱却です。筆者の会社は世界で約500社の顧客を抱えているのですが、それらの顧客の大半は、ソリューションの導入時点においてまずはこのステージにおける改善の施策として導入の判断をされるケースが多いと思います。
一般的には、このステージの企業には次の特徴が見られます。
- システム環境の整備がされておらず、複数の分断したシステムや紙の伝票が残っている
- サービス事業の収益化への取り組みは始めているものの、システム環境の未整備から、改善のための指標が設定されておらず、かつそれらの指標を定量的に評価するための数値データがない
- サービス事業がシステム的にも組織的にも“サイロ化”しており、モノづくりの現場や販売の現場と連携できていない
第2のステージは「サービスによる競争優位の確立」です。このステージで初めて企業の川下戦略の実行フェーズに入ることになりますが、前述したとおり、第1ステージであるサービス事業の収益化がなされてはじめて進められるステージと言えます。
このステージにいる製造業は世界でもまだ少数ですが、これらの企業に共通して見られる特徴として「IoTの有効活用」への取り組みが挙げられます。製造業でのIoT利用というと、「Industrie 4.0」に代表される製造現場での利用が中心ですが、筆者は製造現場よりも保守サービスの現場での利用が今後はもっと進むだろうと予測しています。
その1つが予知型保全です。予知型保全は、従来の緊急対応型(もしくは火消し型)保守対応に対し、初回解決率の向上や保守サービス要員の適正配置、保守部材コストの削減といった経営指標に直結する定量的効果を期待できるのはもちろん、製品に障害が発生する前に対策することによる製品稼働率の向上により顧客満足向上に貢献します。