日銀の岩下氏は、「デジタル通貨において中央銀行が発行することは可能であるし、そうしてほしいという声もあるのはわかるが、そうすると国民全てが中央銀行に口座を持つ、結果的に全ての通貨の移動を中央銀行に把握される、ということになる。それは民間金融機関との競合及び棲み分けの問題も含めて考えていかなければいけない」という発言があり、日銀としてかなり深くブロックチェーンの社会への適応について考えている様が見て取れた。
最後のパネルディスカッションでは「ブロックチェーンの安全性と汎用性を考える」と称してヤフー株式会社の楠正憲氏、経済産業省の佐野究一郎氏、日本IBMの高城勝信氏、MITメディアラボの松尾真一郎氏、日本マイクロソフトの榊原氏、モデレータとしてGLOCOMの高木氏が参加し、ブロックチェーンそのものの安全性と社会システムの中でのこれまでの通貨や取引を置き換える際の懸念点などを議論した。
高木氏、榊原氏、Skypeで登壇した松尾氏
「そもそもスマートコントラクトの契約を記述するための言語であるSolidityで"Hello World”が書けちゃうってどうなのか」というパネリストのコメントが現状を物語る。つまり、コンピュータ及びネットワーク上のソフトウェアとしてのブロックチェーンとその応用がまだリアルな社会システム、通念や常識ともかけ離れていることを認識した上で試していくことが重要であるという意見が多かったように思える。
モデレータの高木氏のブロックチェーンやスマートコントラクトをiPhoneのアプリのように審査する仕組みは必要か、という問いかけに対しては、多くのパネリストが否定的な意見を述べた。ブロックチェーンに対してはインターネットがそうであったようにもっとサンドボックス上で実験を行った上で進化させるべきという松尾氏の意見が非常に納得できる意見と思えた。
ちなみに経済産業省の試算ではブロックチェーン技術によって影響を受ける市場は概算で約67兆円ほどであるという。
経済産業省のリサーチの詳しい内容は 「ブロックチェーン技術を利用したサービスに関する国内外動向調査」を参照いただきたい。