米Dell Technologiesは10月20日まで米テキサス州オースティンで「Dell EMC World 2016」を開催した。19日の基調講演では、エンタープライズシステムブランドDell EMCを率いるDavid Goulden氏が、新製品とともに製品戦略について説明、新製品はDellとEMCの技術を統合したものとなり、巨大なシステムベンダーの始動を印象付けた。
ITは効率化のための技術からビジネスに
DellとEMCの合体により立ち上がったDell Technologiesでは、PCなどクライアントのDell、エンタープライズシステムのDell EMC、それにVMware、SecureWorks、Pivotalなどが独立性を維持して運営される”ファミリ”体制を敷く(EMC時代は”フェデレーション”と言われていたがDell Technologiesでは”ファミリ”と表現している)。
Dell EMCを率いるGoulden氏は、まずこの15年のITの進化を振り返った。クライアント/サーバ、インターネットの普及が全体のトレンドだが、この間速度や性能は1000倍にアップした。役割としては、バックオフィス、ミドルオフィス、そしてエンドユーザーの効率化が中心で、SoR(System of Record)を作ってきた。ソフトウェア開発は減ってパッケージアプリケーションでビジネスを動かすようになったのも特徴だ。
現在、「ITそのものがビジネス」とGoulden氏はいう。「ITがイノベーションを加速し、エンゲージメントを強化する」。差別化のためのソフトウェアの開発が必要となっていると続ける。
ではIT投資はどうか。年間2兆7000億ドル程度だったが現在投資を抑えて最適化を図る方向にある。一方で、速度や性能、信頼性に対する要求は高くなっており、デジタルトランスフォーメーションのためにクラウドネイティブアプリケーションへの投資が必要だ。「クラウドネイティブアプリケーションの波が迫っている。この波は大きく、業種業態に関係なくこの波に乗らなければならない」とGoulden氏。
既存のアプリケーションとクラウドネイティブアプリケーションの波が起こっている
既存とクラウドネイティブ――両方を支援するインフラが必要
そこで求められるのが、既存のアプリケーションと新しいクラウドネイティブアプリケーションの両方を支えるITインフラだ。問題は、この2つのアプリケーションの性質は大きく異なるという点だ。既存のアプリケーションはサーバ主導でスケールが容易だが、クラウドネイティブアプリケーションはステートレスで、分散したスケールアウト型。1000倍のユーザーが1000倍のデータを生成しており、DevOps環境で開発されるという。ここを解決するのがDell EMCの役目だ。Goulden氏は「両方で卓越さとリーダーシップを発揮できる」と胸を張る。
「オンプレミスかオフプレミスか、ではなく両方が答えだ。プライベートクラウド、パブリッククラウドのハイブリッドクラウドだが、パブリッククラウドは複数を利用するマルチクラウドになる」とGoulden氏は予想する。実際、ハイブリッドクラウドに移行することは、実質的なメリットをもたらすという。ハイブリッドクラウドを受け入れることで企業は約24%のコスト削減が実現できるが、削減したコストの40%を新しいデジタル化のためのイニシアティブに充てることで、デジタル面での目標を達成できる可能性が3倍高まる、とGoulden氏はいう。
実際の製品としては、「顧客とエンゲージしながら、DellとEMCの技術を統合し、完全にプリ・エンジニアされたプライベートクラウドを既存のアプリケーションとクラウドネイティブアプリケーションの両方に提供する」という。ハイブリッドクラウドで必要なパブリッククラウドについてはミッションクリティカルアプリケーション向けにVMwareの独自バージョンがあり、バックアップには「Virtustream Cloud」を用意する。汎用ワークロードであれば、VMwareはIBM SoftLayer、AWSと提携しており顧客に選択肢を提供する。Microsoftとも密に協業しており、Google Cloudもサポートしている。
同時に、これまでのようにコンポーネントが欲しいというユーザーには、アプライアンス型の「VxRail」を用意する。この日Dell EMCはVxRailでDellのPowerEdgeサーバをサポートすることを発表、エントリーレベルでは3Uで108コアを搭載、4.5TBのRAM、90TBのフラッシュストレージを持つという。約200の仮想マシンを動かすことができ、価格は5万ドル以下とのことだ。
PowerEdgeを搭載したVxRail