SAPが11月9日まで、スペイン・バルセロナで開催した「SAP TechEd 2016」で、同社エグゼクティブ・ボード・メンバーでプロダクト&イノベーション担当を務めるBernd Leukert氏が語った「データ、ユーザー、ビジネスの解放」。前半のデータの解放に続き、ユーザーとビジネス、それぞれの解放についてまとめる。
機械学習の統合とFiori 2.0でユーザーを解放
「ユーザーの解放」は、機械学習などのAIによる自動化とスマート化、使いやすいUIが実現する。
SAPは少し前から機械学習などのAI技術のアプリケーションへの組み込みを進めている。機械学習によりユーザーは情報と洞察を得ることができ、推奨されるアクションから選択すればよい。繰り返しの作業から解放され、重要なことに時間を割くことができるというわけだ。
土台になるのは、デジタルコア――S/4 HANAだ。HANAを土台とした第4世代のERPとして2015年2月に発表された。Oracleデータベースが利用できないことからSAPの方向性に疑問視する声もあったが、18カ月で採用企業数は25業界4100社を数え、「SAPの製品では最も高速に採用が進んでいる製品」とLeukert氏は胸を張る。
10月末に提供を開始した最新の「S/4 HANA 1610」リリースで導入したのが、最新のユーザーエクスペリエンス・アプリ技術の「SAP Fiori 2.0」だ。アナリティクスの組み込み、シュミレーションと予測の統合、人間とマシン間のコラボレーション、検索機能の改善などが特徴となる。1610ではオンプレミスとクラウドでFioriのテーマを全てのシステムで利用できるようになった。発注などの複雑な処理であっても、Fioriのモダンなインターフェイスを使うことができるという。
Fiori 2.0を使った調達のデモ。担当者の画面にはアナリティクスが入っており、通知、最近使ったアプリやよく使うアプリなどが並ぶ”Me Area”がある。デモではオーバービューにある”至急の調達リクエスト”をクリックして瞬時に情報を得た。これまでなら4、5のアクションが1つで完了した
AIを用いたパーソナルアシスタント「CoPilot」もデモした。デスクトップ版の後、移動中を想定してアプリ版のCoPilotに切り替え、スマートフォンに向かって「XXX(サプライヤー名)に対する支出はどれぐらい?」と問いかけると、取引情報を音声とテキストで知らせた