クラウドストレージはメールより安全か
標的型攻撃の被害は収まる気配がありません。2016年も、多くの顧客情報を扱う大企業から機密情報を扱う研究機関までマルウェアによる個人情報の流出事件の報道が相次ぎました。報道された事件の多くが、メールによるマルウェア感染により引き起こされています。
警視庁の公表した2016年上半期の標的型メール攻撃の件数は1951件で、2015年の下半期からは減少しているものの、2年前の216件からは大幅に増加していることが分かります。巧妙なだまし文句で、人間の心理の隙を突いて警戒心を解き、相手を狙い打つ。添付ファイルを開かせて感染させる手口は、標的型攻撃の常套手段の1つです。
警視庁による「平成28年上半期におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」より「標的型メール攻撃の件数の推移」
標的型メール攻撃に用いられるマルウェアはPC上で実行可能な形式のファイルで、典型的なものは、EXE形式といわれるものです。海外では、メールにEXEファイルが添付されていた場合、受信できない設定にしている企業が大半ですが、国内では受信を禁止している企業は、大手を含めて稀です。
実際に弊社パロアルトネットワークスの顧客の実データに基づく統計データによると「メールに添付されているWindows実行形式ファイル数」の国別トップ5は、2位の米国と比べ1.5倍近い差をつけて日本が1位となっています。
メールに添付されているWindows実行形式ファイル数 国別データ(パロアルトネットワークス調べ)
このため、実行形式のファイルを文書ファイルのように見せかけて、添付ファイルをクリックするだけでマルウェアを実行させる初歩的なだましの手口も、まだまだ日本では通用しています。外部との実行形式ファイルのやり取りの必要性から、メールへの添付の禁止に踏み出せないのだと思いますが、このままでは、標的型攻撃に対する企業側のリスクは高いままです。
そもそもメールによるファイルの共有そのものが時代遅れだといえます。最近は、ビジネスでも高画質な写真や動画など、サイズが巨大なファイルをやり取りするケースも増えています。添付ファイルのサイズ上限は引き上げられているとは言え、動画などの巨大ファイルは、さすがにメールではやり取りできません。こうした外部とのファイル共有に役立つのがクラウドストレージです。