シビックテックとオープンソースの共通点--地域の課題をみんなで解決 - (page 2)

飯田樹

2016-11-22 07:00

「シビックテック活動はオープンソースと同じ」

 続いて、東日本大震災後に震災対応の技術者チームHack for Japanを立ち上げたIncrementsのプロダクトマネージャーの及川卓也氏が、2011年以降、災害に対してITがどう関われるかという課題に取り組んでいる立場から発表。オープンデータを用いた活動が、ビジネスとしてサービスを継続させることができているのかを厳しい目で考えることの必要性を指摘した。


Increments株式会社プロダクトマネージャーの及川卓也氏

 及川氏はオープンデータを用いた活動の中では、オープンデータを使うという手段が目的化し、ニーズを見落としてしまうことがあると指摘。「人は動機ときっかけの両方があって初めて行動に移ります。きっかけが発生したときに、そのサービスを知っていれば使うかもしれない。そういうことを考えて、使われる製品やサービスを作らないと、残念ながらシビックテック活動はビジネスの観点で見た時に、継続性のあるものにならないのではないかと思います」と、活動がニーズをつかみ、それに合ったサービスであることの重要性をコメントした。

 それでは、実際の活動ではニーズをどのようにとらえてサービスに落とし込んでいるのか。Code for Kanazawa代表理事で、アイパブリッシング株式会社代表取締役の福島健一郎氏は、Code for Kanazawaが取り組み、この4月にサービスを開始した石川県奥能登地方の子育て情報サイト「のとノットアローン」を紹介した。同サービスは、過疎化や高齢化が深刻な石川県の輪島市や珠洲市などに住む母親たちが、自らプロジェクトチームを率いる形で実現した。

 それらの地域では子育て情報が手に入りにくいため、孤立化しているという課題を解決することが目的だ。「自分たちが本当に欲しいものを作ろうという、ニーズから始まる形で実現」したという。活用できるオープンデータが最初からあったわけではなく、サービスのために各市にデータ公開を要求したとのことだ。

 Code for Kanazawaは民間企業や行政の影響を受けず、中立な立場でシビックテックに取り組むことをポリシーにしているという。プロジェクト制をとり、アイデアソンやハッカソンを通して、市民が継続的に活動に取り組める場を作っている。また、アイデアソンなどは敷居が高いという人に向けたミーティングの場も設けているとのことだ。

 特に課題抽出には時間をかけているとし、「アイデアソンやハッカソンに来るエンジニア以外の人達からも、課題を出してもらっています。課題が1つ出たとしても、それで納得するのではなく、その課題に他の人も共感できるのかを話し合っていく形」でニーズをつかんでいるという。

 シビックテックの抱える課題についての議論があった一方で、福島氏は「シビックテックはビジネスにも活用できる」とシビックテックに携わるメリットを説明。及川氏もシビックテックを通じてITのプロフェッショナルとしての成長が望める点を強調した。

 さらに及川氏は、「シビックテック活動はオープンソースと同じ」とした上で、オープンソースでソフトウェアに問題があった時に報告してパッチを作るのと同様、「市民社会でもおかしい部分があれば行政に伝えると同時に、シビックテック活動でそれを直す取り組みに協力できる。シビックテック活動で社会は良くなっていくのではないか」と希望を語った。

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