インドのITサービス企業Wiproは、クラウドや自動化による破壊的変革の波にさらされるなか、理にかなった企業買収を実施してきている。この戦略は、変革の波を乗り切り、同社を「将来の環境変化に耐えられる」ようにするうえで役立つはずだ。
2016年はインドのIT企業にとって極めて難しい年となっている。Cognizantのような、かつて若き成功者と称された企業だけでなく、InfosysやTata Consultancy Services(TCS)といった大手企業も、これまでに業績見通しを何度も引き下げており、売上高の伸びも大きな落ち込みを見せている。
クラウドや人工知能(AI)の利用、そしてデジタル化が進展する新世界において、オンサイトの開発や保守にいまだ大きく頼っている保守的な企業は苦戦を強いられている。
Wiproもその例外ではない。同社に対する大半の評価は、インドにおける3大IT企業として挙げられる残り2社(InfosysとTCS)に比べると、能力がありながらもぱっとしない企業というものだった。その利益幅は常にライバル2社に後れを取り、過去4年の成長率はわずか6%と、Wiproを除く大手4社の半分程度でしかない。また、Wiproは市場シェアを奪われ続けているため、アナリストらからの評価が低いのも驚くにはあたらない。
しかし現在、見かけ上は後れを取っているWiproが、厳しさを増すIT業界のなかにあって、古くからの競合であるInfosysやTCSには成し遂げられそうもないやり方で逆転の一打を放とうとしている。Wiproがわずか9カ月間で行ってきた、競合他社にまねのできなかった業績回復手段とは一体どういったものなのだろうか?
Wiproは2016年1月に、新たな最高経営責任者(CEO)としてAbid Neemuchwala氏を任命した。しかし、Wiproの復興にはNeemuchwala氏だけでなく、Rishad Premji氏も大きく貢献している。同社の創業者であり、長くCEOを務めたAzim Premji氏の息子である39歳のRishad Premji氏は、最高戦略責任者(CSO)として同社のM&Aを統括してきている。
Rishad Premji氏は、Premji一族であるが故に簡単にCSOの座を得たというわけではない。同氏はハーバードビジネススクールで経営学修士号(MBA)を取得した後、GE CapitalやBain & Companyを経てWiproに入社した。Wiproでマネージャーの地位からスタートし、出世の階段を徐々に上り、最終的に戦略ポートフォリオの責任者という立場を手に入れた後、2015年に同社の取締役会に迎え入れられた。同氏はここ数年、IT業界を揺るがせている変革の荒波に立ち向かえるだけの体力を持った企業を目指し、その下地作りに注力してきている。