IoT

動き始めたIoTによる産業改革--IoTビジネス共創ラボ報告 - (page 2)

取材・文:阿久津良和 構成:羽野三千世

2016-12-08 12:38

 分析WGを代表して、ブレインパッド ソリューション本部 プロダクトサービス部 部長 熊谷誠一氏は、コグニティブサービスに注目し、「すし屋でおもてなし」を開発中であると説明した。

 例えば混雑時にはロボットが顧客に一次対応をするなど、「海外からの来訪者から『日本は凄いぞ』と思ってもらいたい」(熊谷氏)。Azure Cognitive Servicesに含まれるFace APIを利用し、年齢に応じて切り替わるメニューや、Bing Speech APIを用いた音声注文の品質向上を目指す。さらにバックエンド側ではAzure MLを使った売上予測や、Power BIによる可視化も行う予定だ。

 沼本氏は、米マクドナルドのドライブスルーサービスで、Azureのサービスを組み合わせた特化型言語認識が活用されている事例を紹介し、日本の細やかな感受性に基づく接客は世界で需要が高いと評価した。また、欧米では東西で文化的にAI(人工知能)に対する反応が異なることも説明。西側はAIが人の仕事を減らすという恐怖感を持っているが、MicrosoftのAIは人の能力や可能性を拡大させる存在であるとアピールした。

 ヘルスケアWGを代表して、ユニアデックス マーケティング本部 ビジネス開発部 新ビジネス企画室 グループマネージャー 椿健太郎氏は、オフィスのトイレ活用と介護サービス支援IoTの概念実証・実証実験の結果を紹介した。

 同社における分析では、オフィスの男子個室トイレの利用状況を可視化すると、大半の時間帯で4つのうち2つの以上の個室が利用されるなど、効率化される傾向が明らかになったという。今後はこのデータを活用して、何らかの改善策につなげていく。

 介護サービスに対しては今後の介護人材不足を踏まえて、Pepperを活用した介護支援を目指す。半月前から実証実験に取り組んでいるが、高齢者がPepperに対して苦手意識を持つ傾向が見られると椿氏は途中経過を報告した。同時に、介護士・介護スタッフ側のケアが必要だと説明。介護サービスの現場に携わる人々は往々にしてITリテラシが高くないため、全体的なサポートが必要だという。

 今後の展開として海外事例を参考にしたアクセラレーションを目指すという説明に対し、「米国では大きな医療機関が自社ITで構築し、SI事業者が介在しない。だが、横に広がるようなソリューションの紹介は続けたい」と沼本氏。「日米でビジネスモデルが異なるが、(日本マイクロソフトは)需要を高める支援を行う」(大谷氏)と支援姿勢を明らかにした。


Microsoft Azureに接続したPepperのバックエンドとして各コグニティブサービスを利用し、介護サービス利用者との会話やデータを取得。利用者ごとの身体データなどを可視化する

 Pepper WGを代表して、ソフトバンクロボティクス 事業推進本部 エンタープライズ&グローバル事業推進部 エンタープライズ事業課 村林圭子氏は、幹事社である日本ビジネスシステムズ システムインテグレーション統括本部 AOソリューション本部 本部長 福田雅和氏と共に、Azureに関する技術情報提供や定期的な勉強会を開催して、Pepperを利用した成功事例の商用サービス化を目指すと説明。毎月開催する勉強会には50人前後の受講者が集まっているという。

 続いて行われた参加者によるディスカッションでは、クラウド移行に二の足を踏む国内製造業からの意見に対して、米国では「オンプレミスよりもクラウドの方が展開やセキュリティ面で安全なことを、繰り返し説明してきた」と沼本氏。Office 365やAzure Active Directoryはセキュリティ対策機能を充実させ、AzureもISO(国際標準化機構)など第三者による国際監査基準を満たしてきた。「(Microsoftは)安全な管理を行っていることを担保し、信用度を高めている。欧米と比べて日本は(クラウドビジネスを)加速させる余地がある」(沼本氏)と可能性を示した。

 IoTビジネスについても「Microsoftは(IoT分野へ)収入以上の投資を行っている。可視化やデータ収集も大事だが、分析と洞察からビジネスプロセスのトリガーを作り、パートナー企業の価値を高めていきたい」(沼本氏)とIoTビジネス共創ラボに対する協力姿勢を強調した。


左から、日本ビジネスシステムズ システムインテグレーション統括本部 AOソリューション本部 本部長 福田雅和氏、ブレインパッド ソリューション本部 プロダクトサービス部 部長 熊谷誠一氏、ユニアデックス マーケティング本部 ビジネス開発部 新ビジネス企画室 グループマネージャー 椿健太郎氏、日本マイクロソフト クラウド&エンタープライズビジネス本部 エグゼクティブプロダクトマネージャー 大谷健氏、Microsoft クラウド&エンタープライズ担当コーポ-レートバイスプレジデント 沼本健氏、東京エレクトロンデバイス IoTカンパニー バイスプレジデント 福田良平氏、ナレッジコミュニケーション 取締役 執行役員 COO 小泉裕二氏、ユニアデックス マーケティング本部 ビジネス開発部長 部長 関口修氏、ソフトバンクロボティクス 事業推進本部 エンタープライズ&グローバル事業推進部 エンタープライズ事業課 村林圭子氏、東京エレクトロンデバイス IoTカンパニー エンベデッドソリューション部 部長代理 西脇章彦氏

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