セールスフォース・ドットコムは自社イベント「World Tour Tokyo2016」を12月13日、14日の2日間にわたり開催した。13日に実施した基調講演では、新たに発表したAIテクノロジー「Einstein(アインシュタイン)」を導入することで、従来のサービスがどう変化し、企業にどんなプラス効果をもたらしていくのかを紹介した。
AIは主要ITベンダーほとんどが取り組む領域だが、セールスフォースでは「これまでのAIは、仕事に活用する前にデータサイエンティストが前処理を行う必要があった。人材が足りない現状で、データサイエンティストなしでも全ての企業がAIを仕事に活用できる機能を提供する」(米Salesforce.com Sales Cloud M&EVP アダム・ブリッツァー氏)と蓄積したデータを即AIで活用できることが特徴。パイロットユーザーの事例を交え、ビジネス現場での活用を紹介した。
米国Salesforce.com Sales Cloud GM&EVP アダム・ブリッツァー氏
13日には、EinsteinとSalesforceの各サービスとの関係、導入することで実現する企業ビジネス変革を事例と共に紹介するオープニングキーノートと、Einsteinの今後の開発計画を含む、新しい方向性を紹介するSalesforce Einstein Keynoteという2種類の基調講演を実施した。
オープニングキーノートでは、EinsteinはSalesforceが提供する全アプリケーションのプラットフォームの中に取り込んで提供されることがあらためて説明された。
AIを活用するために不可欠な、「データの収集」、「そのデータを使って発見、予測、推奨、自動化というサイクルでの学び」、「営業活動をガイドすることやサービスの支援、マーケティングの強化などのつながり」の全てが、Salesforceのデータ、アプリケーション上で行われる。
現在、30以上の機能が提供されている。例えば営業職向けの「Sales Cloud Einstein」では、業務で利用しているメール、カレンダー、そしてSalesforceに蓄積されている顧客データなど複数のデータを取り込む。取り込んだデータを分析することで、見込み客の中で率先してアタックすべき相手は誰なのかを見つけ出し、適切なアプローチ方法を提案する。
この他にもサービスエージェント向けの「Service Cloud Einstein」、マーケティング担当者向けの「Marketing Cloud Einstein」、コマース事業者向けにお勧めの商品をパーソナライズ化する「Commerce Cloud Einstein」、インテリジェントなアプリを開発するための「App Cloud Einstein」などが提供されている。
「Cloudが最初に登場した時にも、Cloudが提供している機能を魔法のように感じたのではないか?今回、Salesforceの役割はAIをシステムの一つとしてうまく使えるようにすることだ」(ブリッツァー氏)
ユーザー事例としてソニーマーケティングが取り組んでいるBtoC向け取り組みが紹介された。同社ではこれまで部署ごとに分断されていたユーザーとのつながりを、一気通貫に共有できるものへと変更。マーケティング活動も、ユーザーのアクションに応じてリアルタイムに対応できるものへと変革することを目指している。
ソニーマーケティングの代表取締役社長である河野弘氏は、「これまでソニーのファンになってもらうためには、エンジニアがより良い商品を開発していくプロダクトを軸としたマーケティング施策を行ってきた。今後は、顧客のライフサイクルに合わせたマーケティング施策が必要。購入後に、商品を引き立たせるサービスを提供していきたい」と顧客との接点、アプローチを大きく変えることを目指していると説明した。
デジタルカメラαシリーズのユーザー向けにリアルな拠点として「αプラザ」を開設し、実際の商品をもとに提案する。そこにオンラインコミュニティ、カスタマーサポートを連携することで、より製品への理解、活用度合いを上げ、顧客満足度向上実現を目指す。例えば、IoTでレンズの利用状況を把握し、子供の運動会などイベントが多くカメラの利用頻度が高い秋には、レンズクリーニングサービス利用の提案など、製品購入後に必要なサービスを提案する。