アプリ
2007年、Jobs氏は同デバイスがサードパーティー製のアプリをインターネット経由で利用できるようになると述べた。こういったアプリはWeb 2.0時代のツールに分類されるものの、Appleが開発者主導のエコシステムを構築しようとしている姿勢だと受け止められた。
その後、2008年7月に同社の「App Store」が「iTunes」のアップデートというかたちで開始された。Appleは同社のプラットフォームを発展させるという目的で、品質の管理と収益の配分が可能なマーケットプレースを築き上げたのだ。
そして2011年、Appleはアプリの100億ダウンロードを達成した。
App Storeで公開されているアプリの大半はコンシューマー向けのものだったが、同社は教育分野および法人分野のテクノロジベンダーが「iOS」上で開発を行うためのツールも用意していた。iOSに対するこうした動きは、法人向けアプリに対する数年にわたる取り組みにつながっていった。
その結果AppleのiOSは、「Android」がコンシューマー市場におけるシェアの大半を獲得しているなかにあっても、法人市場をリードするようになった。
さらに同社は近年、IBMやSAPといった法人向け製品を手がける大企業との結びつきを強化している。これら企業と提携する目的は、市場では入手できない、カスタマイズされた法人向けアプリを作り上げることだ。こうしたアプリを成功させる秘訣は、企業がバックエンドで抱えているデータや基幹アプリを、Appleのフロントエンドインターフェースと融合させるところにある。
「iPad」の順調な普及
2007年にiPhoneが発売された際、企業の最高情報責任者(CIO)たちの多くは、同デバイスに懸念を抱き、大企業の要求に応える製品ではないと考えていた。
筆者は、「Gartner Symposium/ITXpo」の会場で、CIOたちからこういった懸念を何度も聞かされていた。しかし、2009~2010年頃にはこのような懸念が聞こえてこなくなり、企業での大量導入事例も見られるようになった。
2010年1月、Jobs氏は「iPad」を発表した。そして、GartnerのCIO向けカンファレンスが始まる同年10月頃には、ほとんどのIT部門リーダーがiPadを所有していた。当初iPhoneを過小評価していたCIOらは、iPadで同じ過ちを繰り返したいとは思わなかったのだ。
iPhoneと同じiOSが稼働するiPadは、急速に普及していった。iPadとiPhoneはAppleの法人市場での地位を確固たるものにした。また、タブレットがPCよりも優勢になるに従い、機器の購入サイクルが見直されるようになっていった。
iPhoneが存在していなければ、企業でiPadやタブレットがこれほどまでに急速に普及することはなかっただろう。