--ウフルはどのような立場で関わっているのか。
松浦氏 i3の事務局支援、IoTパートナーコミュニティ運営(メンバー企業との共同運営 ) と事務局を担当しています。IoTパートナーコミュニティは、IoTを導入しようとしても「ビジネスモデルがわからない」「どこの企業と組めばよいのか不明」「業界別に課題が違う」といった声があることから、活動の場や企業連携のきっかけとなるコミュニティを発足させようということで、誕生しました。
ウフルは発起人として、17社と共同で立ち上げました。12月8日現在で38社のメンバー企業、7社の協力企業、2社のアドバイザー企業が関わっています。実ビジネスの構築を目的としているのが特徴で、7つのワーキンググループを立ち上げ、半年でビジネス構築を目指しています。小さい企業も多い組織のため、特化した技術があることと、活動への積極的な参加が、コミュニティ所属の条件です。
後日、松浦氏からi3とIoTパートナーコミュニティとの提携理由について「事業会社とIoTソリューションとのマッチングを促進する狙いがある」という趣旨で以下のような説明があった。
「i3には、事業会社が多く加盟しており、現在は、農業と製造業を中心に取り組みを進めています。一方のIoTパートナーコミュニティは、特徴のあるIoTソリューションを提供する企業やIT企業が多く加盟しており、流通、物流、ヘルスケア、建設、飲食業向け、さらには、要素技術となるAI、ブロックチェーン、セキュリティに関連したテストベッド構築や技術検証に取り組んでいます。つまり、今回の戦略的な提携は、事業会社が持つ現場の課題と、それに合致したIoTソリューションを結びつける役割を果たし、業界・業種を超えた交流することで、相互の知見の共有とIoTビジネスの拡大を実現します。また、双方のコミュニティが日本で構築したテストベッドを海外に展開し、グローバルビジネス化することを目的としています」
--ワーキンググループでのテストベッドの内容とは。
松浦氏 一例として、流通のグループをご紹介します。「オムニチャネル時代における流通をそのものを俯瞰(ふかん)し、実店舗とネット店舗のポジションをとらえながら、市場との関連、そしてもの自身の物流や人の意識、行動を含めて新しいソリューションを考える」のが流通グループの活動内容です。流通業向けに、センサ、通信、その他デバイスを組み合わせたPOCを構築することを目的にしています。
ウフルのIoTイノベーションセンターマネージャーの松浦真弓氏
11月には実証実験として、グループメンバー企業の1つであるOisixの実店舗 にセンサを設置し、データを収集して売上増に役立つ情報を得るという試みをしました。全来店者をカバーする人数カウントや、行列人数カウント、来店者の性別年齢推定、店内の温度湿度照度などのデータを収集。人数カウントについては精度の高いデータが取れた一方、行列人数カウントはセンサの計測エリアから行列の位置が外れることがあり、人数の精度は低いといった結果が出ました。
安定したセンシング・通信の確保など、システムのライフサイクル全体にわたる管理・保守が必要だという課題も明らかになり、今後は、より深い分析や測定場所の増加などが必要になるという報告が出ています。
そのほかにも、ヘルスケアのグループは、介護予防・健康寿命延伸をテーマに、活動量計のFitbitを利用したエクササイズ情報の取得をデイサービスの現場で実験しました。IoT×AIのグループでは、駐車場や飲食店から集めたIoTデータをAIやMLを用いて活用するための研究・検証をしています。ブロックチェーンを利用したIoTインフラでのサービス開発をしているグループは、「本人のみ受け取り可能な宅配ボックス」の開発に取り組んでいます。
--i3の活動としてIoTを推進される中で、どんな課題を感じますか。
吉野氏 最大のハードルは、当事者である企業に、ビジネスビューで物事を見る経験が足りないことです。テストベッドに成功しても、ビジネスとして成り立たないという事例はi3では避けたいと思っています。IICというグローバルな組織の資料を理解することは、グローバルな商売をするための基盤となります。ビジネスモデル変革に、日本企業はどうついていくかということを問われているのではないでしょうか。
そのため、i3としてはビジネスモデルの構築支援とマーケティングの出口支援をしていく必要があると感じています。i3としては、小さくてもいいのでテストベッドを独自で作りたいと思っています。テストに終るのではなく、新しい商売を作るものを、中堅ベンチャーをコアにして実現することが理想です。