定期配送
日用の消耗品で、ほぼ一定周期でなくなることが分かっているようなものや、あるいは雑誌のように定期的に新しいものが発売されるものの場合、定期配送・定期購読などを利用することにより、個々の「買いたいものが生じる」タイミングを気にしないでよいようにもできる。ただし、何を定期配送してもらうかの設定などを別途管理する必要があるので違った種類の手間が生じる。
物理的な店舗に行って買うことから Amazon Dash Button、定期配送などを分析的に考えればここまでに書いた事項以外にもいろいろな特性が見つけられるだろう。買いたいものの種類などに合わせてうまくいろいろなタイプの「買いもの」のためのサービスを組み合わせられれば、暮らしの中の「買いもの」全体のUXが向上するに違いない。
不在配達問題

ネット通販の割合が大きく増え、自分で店から直接持って帰るのではなく宅配便などで配送されるものの数が増えたため、「不在配達」の多さが問題となっている。配送時に受け取る客が不在であると、配送者は他を回ったりした後に再度そこへ行かねばならず二度手間、三度手間になり効率が悪いのはもちろんのこと、受け取る側も手間が掛かる上に受け取るのが遅くなり、UXとしてよくない部分が増える。
マンションなどでは不在時に預けておく宅配ボックスが普及しているが、現在はこれもあふれて再配達になりがちだという。近隣のコンビニエンスストアで受け取るといった配送方法の指定ができるものもあるし、駅などに宅配ボックスを設置するといったサービスも試行されつつある。どう解決していくべきか、さまざまな要素が絡むので簡単ではないが、受け取る側はもちろんのこと、配送する側のエクスペリエンスも軸にして考えていくべきである。
最後に
会社組織でももちろん各種の購買が生じる。日常生活での買い物とは違う部分も多いが、同様に分析することは可能である。購買に当たって必要な手続きや、条件、確認、支払い方法その他、組織としての管理のために必要なものと、購入する現場での都合や使いやすさなど、UXも含めバランスは取れているであろうか。過去からの経緯なども含め、ずっとその環境にいると現状の仕組みが「当然だ」と思い込んでしまいやすい。課題はないか、UX的に改善できる点はないかなどを、あらためて観察すれば、何か発見があるかもしれないので、ぜひ観てみていただきたい。
- 綾塚 祐二
- 東京大学大学院理学系研究科情報科学専攻修了。ソニーコンピュータサイエンス研究所、トヨタIT開発センター、ISID オープンイノベーションラボを経て、現在、株式会社クレスコ、技術研究所副所長。HCI が専門で、GUI、実世界指向インターフェース、拡張現実感、写真を用いたコミュニケーションなどの研究を行ってきている。