とはいえ、組織がこれから機械学習を始めるというフェーズにある場合は、思い切って最初の一歩を踏み出すという決断も重要です。
そのような場合は社内に知見や経験を蓄積するという側面もありますので、比較的わかりやすく、成果が出やすいタスクから始めるとよいでしょう。
例えば、後述する「性別推定」は取り組みやすく成果が出やすいタスクだと思います。一方、「登録時にLTV(Life Time Value)を推定」といったタスクは難しく、さまざまな工夫が必要となります。
どこで機械学習が使えそうか、順を追って考える
1つ例を用いて考えたいと思います。ある動画配信サービスを運営している企業が、動画の選択画面に広告を表示することで収益を得ているとします。ここで、「広告収入の増大」を実現させるために機械学習を活用する例を考えてみましょう。
広告収入は大雑把に言えば「クリック単価」×「クリック回数」と分解され、施策により改善しやすい要素は「クリック回数」だとしましょう。
「クリック回数」は「表示回数」×「クリック率」まで分解できます。この例ではクリック率を上げるための具体的な施策を掘り下げます。
施策を考える際には関係者で検討し、いくつかの有望な案と課題を洗い出します。ここでは例として下記の2つを取り上げます。
案1:「動画の好み」に応じた広告の出し分けをする
- 課題:ユーザーごとの嗜好性は把握できていない
- 課題:ユーザー情報として、性別も年齢も取得していない
案2:「性別」と「年齢」でユーザーを分類して広告の出し分けをする
案1に関しては、動画配信サービスであるため利便性向上を目的として「好きなジャンル」を会員登録時に尋ねても特に違和感はありません。
しかし、案2の性別や年齢に関しては動画閲覧に必要な情報ではありませんし、個人情報をなるべく登録したくないという人も増えている中、このような質問はサービスからの離脱を招いてしまう可能性もあります。