このような状況を踏まえ、案1の“好みに応じた広告の出し分け”については登録画面やアカウント管理画面から「好きなジャンル」を登録してもらえるように改修します。
案2の“「性別」や「年齢」で分類した広告の出し分け”については過去の閲覧動画やクリックした広告のデータを利用して推測することが考えられます。
ここで初めて、「性別と年齢を推測する」という目的を達成する手段として、機械学習を活用するという判断に至ります。
もちろん、案1のについても機械学習を用いることは可能です。しかし、必要な情報を直接ユーザーに入力してもらったほうがより確実で、かつ実装コストも安いのであれば、機械学習を活用しないというビジネス上の判断もあります。

上と横、両方向への連携を意識
ビジネス上の目的と機械学習を使って解決したい課題が決まれば、企画フェーズから開発フェーズへと移行します。この時、開発に関係する上司やデータベースを管理している部門との連携が重要になります。
特に初めての機械学習プロジェクトの場合、「本当に成果が出るのか」という問いかけも出てくるでしょう。そういった場合も想定して、関係者を安心させられるだけの下準備と関連部門への協力要請などは綿密にしておくべきです。
プロジェクトが成功したときの改善の見込みや、期待収益について管轄の上司との期待値のすり合わせは重要です。コストと期待収益について概算を共有しておくと、双方が納得した上でプロジェクトを進めることができます。
また、機械学習で解決したい課題は、マーケティング部門やセールス部門との共通課題になっている場合もあるかと思います。
そういったステークホルダーとの連携も視野に入れ、「開発する新機能によって課題が解決できそうか」や「開発やデータ取得のプロセスにおいて他の業務に支障はでないか」などについて確認することも大事です。
キックオフの段階から上司や支援者、影響を受ける関係者にも参加してもらった上でプロジェクトの全体像を共有し、目線合わせができていればプロジェクトが孤立するリスクも軽減できます。

<後編に続く>
- 田中耕太郎(データサイエンティスト)
- 東京工業大学大学院にてMOT(技術経営専門職)を取得。 在学中より研究開発系の大学ベンチャーにて企業戦略の策定、マーケティングに従事。 IT系ベンチャーにて主に事業企画、プロジェクトマネジメントを経験後、 コンサルタントとして大手企業や官公庁のデータ分析案件を担当。 データサイエンス領域では機械学習の活用、統計を用いた事業分析を専門に行い、 組織の立ち上げ、データサイエンティストの採用や育成にも注力。 現在はC2Cの領域で、主に事業状況の可視化やビッグデータ分析を担当している。