調査

日本企業のデータセンターは積み残された課題が山積、2021年には危機的状況も

NO BUDGET

2017-03-31 09:59

 ガートナー ジャパンは3月29日、2017年以降のデータセンターに関する展望を発表した。2021年までに日本企業のデータセンターの30%が、施設の老朽化や能力不足に対処するため移転を余儀なくされ、移転プロジェクトの計画、推進、資金確保に多大な労力をつぎ込むことになるという。

 同社が2016年に国内で実施した調査では、自社保有か外部利用かにかかわらず、回答者の36%がデータセンターの老朽化やキャパシティ不足への対応が最優先の課題であるとした。6割近くが、10年後のデータセンター利用面積は拡大していると予想している。しかし、既存のデータセンターの刷新や外部データセンターの新規利用は、施設の建設や移転を伴う大規模で複雑なプロジェクトとなり、多額の費用が発生するため、多くのユーザー企業がデータセンター刷新に関わる決断を先延ばしにする傾向にあるという。

 また、切羽詰まった状況に陥ってから、あるいはプロバイダーから提案されて初めて問題を意識する傾向は、ディザスタリカバリ(DR)対策にも表れているという。

 多くの企業が事業継続計画(BCP)を策定しており、ガートナーの調査でも、回答企業の68%が、データセンターの24時間運用は必須であるとしている。しかし、ITにおけるDR対応は、計画の難しさや投資コストが障壁となり、必ずしも十分なものになっていない、と認識している企業が多いのが実状だという。これらのことから、このままでは2021年までに企業の70%で、国内データセンターにおける現行のDR計画の実効性の低さが認識されるが、そのほとんどは放置されたままになるとしている。

 この他、2021年までにユーザー企業の30%は、デジタルビジネスに向けたデータセンター戦略の見直しに着手するが、その大半は単なるクラウドサービスの利用にとどまるとし、デジタルビジネスの拡大の機会を生かせる企業は、日本企業全体の10%に満たないという結果になるという。

 調査では、「デジタルビジネスやIoTが3年以内に自社のデータセンターの展開に大きな影響を与える」という回答が全体の61%を占めている。しかし、こうした変化に対応できる積極的なデータセンターの将来像を描こうとする企業は少なく、情報とデータへのアクセスをコントロールできるクローズドなシステムを想定し、その運用と維持管理に注力している。その結果、短期的にはクラウドの利用や自社で利用するサービスの多様化が進むものの、長期的にはデジタルビジネスに必要な俊敏性という点で行き詰まる恐れがあるという。

 ガートナーは、これからのデータセンターが、企業のデータセンターと外部データセンター、あるいはクラウドサービスのデータセンターの間を接続するネットワークへと、その目的も含めて多様化し、アプリケーションとデータが散在する環境がさらに拡大するとしている。このため、データセンター間で生じるトランザクションのパフォーマンスやセキュリティ、ガバナンスを保証する相互接続の仕組みを構築する必要に迫られており、こうした課題を解決することで、デジタルビジネスの拡大の機会を生かせるとしている。

 さらに、これらの展望を踏まえ、利用形態や規模の大小にかかわらず、データセンターはITインフラストラクチャの稼働を支えるものであり、ユーザー企業はその動向から目を離すべきではないと指摘する。ユーザー企業に対しては、自社データセンターの長期的な展開方針を確立し、もしものときの保険ではなく、ITリソースの機能不全がいつでも発生し得ることを前提とする取り組みの一環として、DRサイトの構築や見直しを進めることが必要だとした。

 また、これからのデータセンター像には、資産をコントロールするのではなく、俊敏性を強化しながら自社が必要とするサービスの調整役を担う、新たな概念が必要だとした。ただし、ハイブリッドなデータセンター環境が単なるテクノロジの寄せ集めにならないよう、垂直的なテクノロジスタックばかりに注目するのではなく、より広い視野でエンド・ツー・エンドの全体像を重視する方向へ考え方を変えるべきだとした。

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