Gartner Summit

「ここがおかしい」日本企業のアプローチ--ガートナーサミットで海外アナリスト

日川佳三

2017-03-07 07:30

 「ガートナーカスタマー360サミット2017」において、「ここがおかしい、日本企業のアプローチ」と題したトークセッションが2017年2月22日に開催された。

 セッションでは、海外から参加したガートナーのアナリストに、海外と比べた日本の状況と課題を聞き出した。


セッションの様子

 最初の話題として、ガートナーのリサーチ部門でリサーチディレクターを務める川辺謙介氏 が、日本のIT投資の特徴を示した1枚のグラフを提示した。


ガートナー リサーチ部門 リサーチディレクター 川辺謙介氏

 米国を100としたときの日本の投資額と英国の投資額を比較したものだ。まず、ここから見て取れるのは、日本は経済規模に比べてIT投資が少ないことだ。

 日本のGDPは米国の26.5%もあるが、IT投資は米国の20.0%しかない。英国のGDPは米国の17.2%しかないが、IT投資は米国の18.4%もある。日本は経済規模の割にIT投資額が低いことが分かる。

 さらなる特徴として、日本はインフラへの投資に熱心だが、CRM(顧客関係管理)といった顧客系アプリケーションへの投資が少ないことが分かる。

 CRMアプリケーションについては、英国の14.9%に対して日本は7.0%しかない。

日本の半数は顧客系アプリケーションを自社開発している

 これらの結果から川辺氏は、いくつかの仮説を挙げた。日本企業は、テクニックに頼るよりも人手を介したほうが営業やマーケテイングがうまくいくと考えているのか、安心安全志向が強いためにインフラへの投資に回るのか、スクラッチ開発が多く顧客系パッケージソフトの利用率が低いのではないか、などだ。


ガートナー リサーチ部門 バイスプレジデント兼最上級アナリスト Ed Thompson氏

 この仮説について川辺氏は、欧州で活躍するアナリストの1人として、ガートナーのリサーチ部門でバイスプレジデント兼最上級アナリストを務めるEd Thompson氏にコメントを求めた。

 Thompson氏は、日本で顧客系アプリケーションへの投資が少ない理由を、カスタム開発が多く、パッケージの導入が少ないためと推測。「1995年の英国は自社開発が80%でパッケージは20%だったが、現在ではパッケージが80%を占めている。

 一方で日本は現在でも自社開発とパッケージが半々だ」(Thompson氏)。川辺氏は、これをうけて会場の聴衆に挙手にてアンケートを実施した。自社開発とパッケージの比率は、確かに半々だった。

 さらに、「日本は、ある領域では5年進んでいるが、別の領域では5年遅れている」とThompson氏は指摘する。日本は、自動販売機などは普及しており、進んでいる。現金以外の決済手段や、音声から他のチャネルへ移る仕組み、ペーパーレスなどで遅れている。

日本企業にはマーケティング専門組織がない


ガートナー リサーチ部門 バイスプレジデント兼最上級アナリスト Michael Maoz氏

ガートナー リサーチ部門 マネージングバイスプレジデント Gene Alvarez氏

 川辺氏は続いて、顧客と対面する4つのプロセス、(1)マーケティング、(2)営業、(3)カスタマーサポート、(4)デジタルコマース、について日本の特徴を聞き出した。

 (1)のマーケティングについて川辺氏は「日本にはマーケティングの専門組織がない」点を指摘する。CMO(最高マーケティング責任者)を置いている企業は5社に1社だけというデータを提示しながら、米国で活躍するアナリストにコメントを求めた。

 ガートナーのリサーチ部門でバイスプレジデント兼最上級アナリストを務めるMichael Maoz 氏は、「米国でCMOを置いていない企業はガートナーだけ」と説明。「大企業には必ずいる」とした。

 ガートナーのリサーチ部門でマネージングバイスプレジデントを務めるGene Alvarez氏は、「業界による」と指摘。PepsiCo(ペプシコ)のようなブランド企業には必ずいて、金融にはもしかしたらいて、ユーティリティー系にはいないとした。

 川辺氏は、CMOを置いている日本企業の調査データも示した。「マーケティング組織の部門長としてふさわしい経歴は」との問いに対して、34.0%が広告代理店などのマーケティングのスペシャリストがふさわしいとしている。「社内にマーケティングの知識がないことを表しているのではないか」(川辺氏)

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