米国のSpire Globalは衛星AISの他にリモセン画像や気象情報などのデータを組み合わせ、適切な航路情報の配信などのサービスを展開している。
同じくフランスのCollecte Localisation Satellites(CLS)社も衛星AIS、リモセン画像、船舶監視システム(VMS)、船舶警報通知(SSAS)などの複数のデータを組み合わせることで、密漁監視や海上の環境モニタリングなどのサービスを提供している。

図表 衛星AISによる位置情報を用いたデータ活用イメージ
広がり始めた位置情報ビジネス
これまで人工衛星による位置情報はGPSがその中心を担ってきた。しかし近年はテロなどの安全保障上の国際的問題が数多く存在することから、各国ともGPS依存から抜け出す体制を構築しており、今後は各国が整備するGNSSを相互補完的に利用する事により高精度で安定性の高い位置情報サービスが世界で展開される予定だ。
さらに衛星AISの登場により、位置情報サービスは陸域から海域にまで広がりを見せており、海域も含む全球的な位置情報の把握とそれにひも付くサービスの展開も期待できる。
そして単なる位置情報の提供にとどまらず、渋滞情報、事故情報、気象情報などのさまざまなデータと位置情報を複合的に活用し、陸域と海域共に付加価値の高いナビゲーションサービスやフリートマネジメント(車両管理)サービスが提供されるようになると考えられている。
- 八亀彰吾 株式会社野村総合研究所 副主任コンサルタント
- 宇宙産業を中心とした各種産業政策、産学官連携・産業クラスター政策から民間 企業の事業戦略等の幅広いコンサルティング事業に従事。 東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻修了。 大学院ではJAXA宇宙科学研究所にて小惑星や隕石等の太陽系物質科学の研究に従事。